おでん文庫の本棚

大人もこどももみんなで味わう児童文学をご紹介

伝わる言葉を洋書の絵本から考える

 こんにちは!先週パソコンが壊れた話をここで書いたのですが、今読んでいる田部井 淳子さんの『それでも私は山に登る』を読んでいると、山と関わる中で学んだ教訓が、ストレスとの戦いといいますか、極限状態の中でも平常を保ち判断を下せる状態でなければ、誰かの命が落ちるかもしれない、という状況との闘いで、自分もこんなことでへこたれてる場合じゃないなと励まされています。まだ読みかけで、今はガンとの闘いのところを読んでいます。読み終わるまであと少しですが、とてもいい本です。

 

 ではでは本日は、1~4月の本棚に置いている本の紹介です。

 

 『ふゆねこさん(THE WINTER CAT)』

 ハワード・ノッツ 作 まつおか きょうこ 訳

 

 話題に上げるなら本の内容に合わせてまだ寒いうちに、と思い今回選びました。実はこの絵本はブログで2回目の登場です。本棚でもブログでもそのときは邦訳された本を取り扱ったのですが、今回は洋書の方を棚に置いています。こちらは松岡 享子さんの翻訳を原文と見比べてみたいという好奇心から手を出したのでした。

 

 ↓前回の記事はこちら

冬ってなんだろう?から始まる猫の物語 - おでん文庫の本棚

 

 そういえば、本のつくりはほぼ同じですが、洋書の方は紙質が画用紙のように少し手触りがありました。手触りでも本の印象が変わるもので、それが読書体験の一部に知らずに組み込まれているようです。小説でも、本文の紙が真っ白に近い色の本と出会ったときに、普段読んでいる紙には色があることに気が付きました。古くなるほど日焼けしたり、黄ばんでしまうこともあり、経年劣化というと価値を落としているように感じますが、自然と作られていく風合いだと思うと、馴染みはよいです。

 

 こんな話もありました。フランスの映画で、これからの本の在り方を話題にしている中で、本の内容はオンラインで管理をして、紙で読みたいという読者がいる場合には、自らが紙質を選んで本を作る、というより印刷するという表現が正しいかもしれません。

 

 そうした環境負荷を減らすアイデアも素晴らしいひらめきだと思う部分と、本に限らずですが、それこそ、編集者、校正担当者、デザイナー、印刷所など、さまざまな技術が寄せ集まってできたものを、個人のカスタマイズに頼っていくと、本のつくりとして良質なものと出会う機会が少なくなってしまうのではないかという心配も、机上の空論ですが少し頭をよぎりします。ジブリの映画「紅の豚」で、持ちつ持たれつ、という言葉が出てくるのですが、自分だけに頼らないものたちのありがたみを考えています。

 

 さてさて内容については、英語で書かれてはいるのですが、日本語訳と見比べながらで読めている次第です。この絵本に限らず英語と日本語訳を見比べていてたまに思うのは、英語の1文が日本語で2文になったりすることです。ただ、今回絵本を読んでいて考えたことがありました。

 

 人、物、動作、場所、時間、季節、にそれぞれ副詞や形容詞をつけて説明を出来るのは、日本語も英語も同様ではあると思うのですが、

 

 春に赤いリュックを背負った元気のいい小学生が犬と広い公園で遊んでいる

 

 という文章を英語のように型に当てはめて、

 

 (リュックを背負った+元気のいい+小学生)+(犬)+(広い+公園)+(春)

 

 の様に、要素ごとに情報が整理して頭に入ってくるように思うのですが、日本語の場合は言葉の順番に絶対が無いことと、助詞を意識して聞きとろうとするためか、一息で読むのに少し苦労します。一か所でも情報を区切ったり、場所を最初に持ってくると情景が先に予想が付き少し読みやすくなります。

 

 春。広い公園で、赤いリュックを背負った小学生が元気よく犬と遊んでいる

 

 さらに、春をただ春とだけ書くのは、どうも存在感がある割に言葉が無味乾燥なので、この文章の情景を想像したときの印象を与えてみます。

 

 ポカポカの春。広々とした公園で、赤いリュックを背負った小学生が元気よく犬と遊んでいる

 

 という風に連想していくと、これが正しい考え方かは分かりませんが、情景が伝わってくることで内容に入り込みやすくなった気がします。

 

 英語ならではの味わいがまだ掴めていないので、もう少し勉強する必要があるのですが、絵本を読む子どもたちが、初めて出会う言葉がどういうものなのか、分からないままにならずに伝わることを意識したときに、それが場所のことなのか、もののことなのかが分かるように、この絵本では文章の区切り方に気を付けて説明することを意識しているように思いました。タイトルのふゆねこさんが、初めて出会う冬がどんなものか、考えているように、子どもがこの絵本を読んで、冬を知り、あたたかさを知り、と、新しく知ることに胸をときめかせるのではないかと思います。

 

 子どもの知らない言葉の伝え方を考えるきっかけとなったこの絵本、日本語訳の『ふゆねこさん』と見比べて楽しんでいただけたらと思います。ではでは次回もどうぞよろしくお願いします。

 

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