こんにちは!最近はますます日差しが強いですね。家を出て数歩足らずで、たいてい頭に浮かぶのは「カフェでコーヒー飲んで涼みたい」です。近所の公園では、通るたびに小学生くらいの子どもたちが水道を利用して、ばっしゃーと全身水浸しにしているのをみて、うらやましくなっています…。
ということで、本日紹介するのは、ばっしゃーっと波を浴びるスカッと気持ちの良い絵本です。表紙からしてテンションが上がります。
『みんなでうみへいきました』
山下 明生 作 梶山 俊夫 絵
冒頭でお話した水道で水浴びをする子どもを見ていて思うのが、自分はそうした経験をしていたのかどうかということです。みなさんは公園で水浸しになった経験はありますでしょうか。
水浴びをしている子どもをうらやましがっているのは、この暑さを水浴びをしてしのいでいることよりも、その姿がとても楽しそうに映っているところが大きいです。
濡れることに関しては、自分は子どもの頃、雨の日に靴が濡れてぐしょっとするのが好きでした。雨に打たれてしずくがぽとぽと落ちる頭をタオルで包むのは、お風呂上がりの時とは違った良さがあります。大人になっても、雨で全身ぐっしょりする日がたまにあると、このやられた感が笑えてくるし、長靴を履いていれば、(人目を忍んで)水たまりに足を突っ込み、それが初雪に足あとをつけるのと同じくらいの高揚感があったりします。
そうした個人的な好みの傾向もあって、この絵本が好きです。山下 明生さんの本で最初の方に紹介をしていた『ふとんかいすいよく』『海のしろうま』は、情緒にじ~んと響いてくる物語でしたが、『うみのポストくん』そして今回紹介する『みんなでうみへいきました』は、3~5才のわんぱくな子ども時代に刺激的な絵本だと思います(作者は作風がほんとうに豊かです)。
この絵本、みんなでうみへ、とタイトルにありますが、なぜ海へ行くのでしょうか。
読み進めていくと最初のきっかけはもうどうでもよくなってしまうくらい、勢いに飲まれていくのですが、6匹のわんぱくないたちの子どもたちが遊んでいるうちにどろんこになってしまい、その姿で帰ったら、お母さんNGでお家に入れてもらえずに、それなら「どろんこ かいぞく」になってやろうと海へくりだします。そうこうしていたら、ぶた、やぎ、きりん、表紙にいる動物以外にもたくさんのどうぶつ(しかもみんな仲間連れ)が、続々と「どろんこ かいぞく」に加わっていきます。そして目指すは海へ。
お話がちょっとそれますが、山本 明生さんが文章を書き、いわむら かずおさんが絵を描いた『ねずみのでんしゃ』という絵本があります。こちらは、学校に行きたくないねずみの子どもたちに、おかあさんがいいことを思いついて、電車(紐の輪っか)で学校に向かわせることにしたのです(どちらもお母さんがどっしり構えていますね)。そうしたら子どもたちも楽しくなってきて、電車を見た他の子もどんどん加わり、にぎやかになっていきます。次々と友達が増えていくという嬉しさ、というのは大人が読んでも感じるものがあります。
そのエッセンスに加えて今回紹介する絵本は、山下 明生さんといえばの、海。いたちの住む山から海へと舞台が移っていくのは冒険の規模が大きく、誌面での場面の変化も見ごたえがあります。そして、アソビゴコロ満載の変化に富んだページのレイアウトといい、動物たちの全身で感情を伝えてくるような表現も、とても良いです。
山を描いた中間色の緑色から、どんどん海の青色が増えていくことで、小さい子どもでも変化を感じとれるのではないかと思います。そして波にのる動物たちあたりになると、最初にいたところに比べて誌面の余白も少なくなり、にぎやかさが最高潮に達します。
そして、最後にはどんな色が見えてくるでしょうか。ムフフ!
絵についてもすごいと思うのが、この平面的な絵から波の迫力や動物たちの生き生きとした様子が伝わってくることです。迫力、と考えると自分はどうしても奥行きに頼ってしまうので、すこし昔の絵本の特に筆のタッチによる表現方法については、学ぶべきことがあります。今回棚に入れいてる『うみのポストくん』や『みなとのチビチャーナ』も、波の表現やシンプルで太い線が印象的で、絵でもいろんな海があることにびっくりです。しかも、『うみのポストくん』と『みなとのチビチャーナ』は同じ方が絵を描いており、それでいて違う表現を繰り広げているので、作画に対する情熱と熱量に圧倒されています。もし機会があれば、山下 明生さんの本を複数見比べて、楽しんでみてほしいです。
動物たちがにぎやかな絵本、小さいお子さんにぜひ読んであげてみてください。それでは次回もどうぞよろしくお願いします。
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【おでん文庫】7・8月のテーマ ”ここにある海" - おでん文庫の本棚
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