おでん文庫の本棚

大人もこどももみんなで味わう児童文学をご紹介

一生分(?)のタコと出会える絵本

 こんにちは!このあいだ海の日を迎えて、みなさん夏ムードはますます高まっているでしょうか。自分の方は、現実は季節と関係のない過ごし方になってしまっています。七夕のときに風鈴の音を聞いたのが、ここ最近で夏を感じたものでした。いや、そういえば蝉の鳴き声も聞こえるようになってきましたね。製氷機で氷をつくり始めるようになったりも。地味な日々です。家の中にあるはずのうちわも、そろそろ見つけ出したいです。

 

 さて本日は、実際にある海のポストを題材にしたおもしろい絵本をご紹介です。

 

 『うみのポストくん』

 山下 明生 作 村上 康成 絵

 

 この絵本を選んだのは、4歳の男の子を持つお母さんのお話を聞いたのがきっかけでした。まずは、この本の裏表紙をご覧ください。

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 たくさんのかわいい子ダコ!そう、たくさんいます。この絵の面にも80匹近くいるはず。正確に数えるには付箋を使ってひとつひとつ潰していくしかなさそうなくらい、自力で数えるのは困難でした。もうすでに、自力での成功を目指して3,4回は挑戦して挫折しています。数えている間、このつぶらな目をした子ダコたちが数え終わるのを遊びに行かずにじっと待っていてくれるようにも見えて、申し訳ない…。

 

 こんな風にアソビゴコロを持って絵本を読むのも、なんだか新鮮です。『ウォーリーをさがせ!』や『ぴょこたん』シリーズといった遊びのある本を読むのが好きだったのですが、どこかでそうした目的で書かれたものとして見ていた気がします。この絵本は数えることを楽しませる目的で作られているのでしょうか。

 

 数を数える楽しみに目を向けたのは、絵本が大好きなお母さんと4歳の男の子の話を聞いたのがきっかけになります。

 

 身近に子どもがいない生活をしているので、たまに聞くお母さんの話や、子どもと触れ合う機会がとても貴重です。おでん文庫の本棚の7・8月のテーマを決めるちょっと前に、絵本が大好きな親子と遊ぶ機会がありました。その4歳の男の子が今は数を数えるのが好きという話がとても印象に残ったのです。

 

 そんなときにこの絵本。この背表紙で見せる絵の子ダコたちが現れたとき、その4歳の男の子の話を思い出して、うれしくなってきたのです。

 

 本文中にところどころで、この子ダコたちが画面いっぱいに広がります。時には150匹以上いるページも。物語の中に、ふとこういうページが現れたとき、子どもは話をそっちのけで数を数え始めたりするのかなと想像を膨らませて、頑張ってタコの数を数えてみました。結果、きちんと数え切れなくて、あやふやな数字しか言えずですが、手描きでひとりひとりきちんと描かれた子ダコをみていると、何度でも数えたくなる、見ていたくなります。ちょっと熱を上げてこの絵本を読んでいました。

 

 そういえば、なにかに熱を上げていた頃を振り返るとき、その当時の熱量と同じレベルにまた戻ることってなかなか難しい気がします。子どもの頃、トランプで2人で対戦する「スピード」というゲームを父親によく挑んでいて、勝てるまで熱中して遊んでいた思い出があります。それも時が立つと、あの頃の熱量が別の新しく熱中するものに注がれて、そうやってくるくると、いろんなものと出会いが子どもの頃からずっと続いています。

 

 その熱中するものの内容は人によって違うと思います。個人時にはその内容自体がとても重要というよりも、いかにして上手にその気持ちを満足させられるかというのは、出会い方や、関わり方に影響があると思います。

 

 トランプにハマるのは父親にゲームを教えてもらわなければあり得なかったですし、そのとき熱中している気持ちに父親が応えて一緒に遊んでくれたことで、心から熱中して遊べました。

 

 そういう熱中する時間というのは、物珍しいものが多い子ども時代の頃ほど多いのではないかと思います。加えて、そうした子どもの興味関心は、周りにものが多いほど目移りも早いのではないかと考えます。子どもにとってその一瞬、そのひとつのことに興味を持っている時間を、私は偶然知ることが出来たに過ぎずで、そしてその偶然がとても印象に残ったのです。

 

 ブログのいいところは、情報がアーカイブのように残せて、今ではなくてもずっと先となっても、いつかどこかのタイミングで、この記事が誰かの役に立つ可能性があることです(だといいな)。

 

 今の自分にピッタリな本というのは、きっと常に流動的で、むしろそうであった方が、ものとの出会いが広がって楽しいのではないかと思っています。出会いの機会、私もどんどん広げていきたいです。

 

 そして最初に疑問を投げかけた、この数を数える面白さというのを意図して行ったかどうかについて、自分なりに思うのは、自分が面白いと思ったものを描いている、意図が先というより、面白いものを作ろうとした感じがします。前に紹介した本たちとは違う方向性で、のびのびと楽しい絵本です。

 

 もうすぐ8月で、本の紹介もあっという間に折り返しが近づいてきました。今回棚に並べている本以外の山下 明生さんの本も引き続き読んでいて、いいんですよね。すでに来年も棚もまた同じ作家さんで取り上げたくなっています。ではでは、次回もどうぞよろしくお願いします!

 

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【おでん文庫】7・8月のテーマ ”ここにある海" - おでん文庫の本棚

 

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