こんにちは!昨日の夜、さえぎる雲も無く、月が綺麗に見えるなあと思っていたら、今日が今年で一番地球から近い大きい満月がみられるそうです。別の話で、ある漫画で月の引力が潮の満ち引きに関わっていて、そのせいで涙が溢れてくるといったくだりがあったことを思い出しました。これもまたちょうど本日、ジブリ映画の「君たちはどう生きるか」を観た際に泣きました。映画館で見るつもりのなかった奴が心を揺さぶられて家路に着くのでした。
そんな満月の引力が涙も心を引き寄せるような日におすすめの、お月さまと少女の甘やかな時間を描いた絵本を紹介します。おでん文庫9月の本棚テーマ【月さんお星さん】の紹介1つ目にぴったりの真っ直ぐな物語です。
『おつきさまのキス』
リン・マヌエル 文 ロビン・スポワート 絵 片山 令子 訳
作者はカナダのオンタリオ州生まれで、邦訳された本は他に見つけられずでしたが、現地では『赤毛のアン』の作者であるL・M・モンゴメリに関する本や、子ども向けの本を出版しているそうです。『Lucy Maud and the Cavendish Cat』という、モンゴメリが飼っていた猫の視点から『赤毛のアン』執筆の様子が描かれた本は読んでみたくなります。子ども向けのミステリー本というのも、紹介している絵本とはまた違った方向の作品だと思うので、こちらも気になります。
(話が逸れてしまいますが、リン・マヌエルの名前でWeb検索をかけたときに、トップに表示されるウィキペディアで、アメリカ合衆国の作曲家、作詞家、劇作家…と文章が続いているのが目に入り、作詞・作曲も手掛けているとは、なんと多彩…とさらに詳しく調べようとしたらどうやら違う人がヒットしていました。見ていくと、演技もすればディズニー映画の音楽を手掛けたりと気になるプロフィールです。もちろん趣味と仕事は求められる質が違いうことを理解していますが、私は好奇心のベクトルがいくつかあることを素直に楽しんで実行できる人になりたくて、なんだか思いがけず面白い人を知ることになりました。括弧で括るには文章が長くてすみません。)
絵を担当したロビン・スポワートは、ちょっとだけ邦訳された絵本を手に取ることができたので読んでみました。それらは動物たちが擬人化された世界観で、内容もほのぼのとするのですが、『いいこって どんなこ?』という絵本には、この隠しきれない作者のソウルカラーのようなものが溢れているように思えるのです。紫色や青が印象に残る使われ方をしています。
みなさんは紫色のイメージというと、どんなものが浮かぶでしょうか。私は妖艶、不安、さみしい、美しい、幻想的といったものが浮かびました。紫色を扱うことは、夜の世界も幻想的な雰囲気に包みこんでくれそうです。
そして実際、そうしたイメージをしっかりとかたちにしているのがこの絵本です。夜といっても紫をはっきりと取り入れているのは、なかなか、他に見ないと思います。作者の持ち味の色が全ページに渡って描かれていて、気持ちがよいです。誰しも学校の授業で得意な科目と不得意な科目を持っていたと思いますが、この絵本はその得意科目が発揮されて、尚且つ、物語に寄り添って、冷たいイメージの寒色系の色を全体に使いながら優しさを感じさせる、私が読んだ範囲の絵本の中でも特に繊細な表現が加わっている様に思います。
ゴッホが描く絵というと、その流動的な筆のタッチが印象的です。夜空にも渦巻くうねりがあり、空気の流れが生き生きと絵の中で感じられるのですが、この絵本もそうした感触に気が付くことができます。一見冷たい色使いでも、そこに優しいタッチが加わることで、柔らかい空気が流れて、遠いところにいるお月さまと少女の間に通い合うものが視覚を通しても見えてきます。
物語は日常のさりげない一幕を切り取って描かれます。少女とおばあちゃん(私がここで書くと幼稚に聞こえそうですが、片山 令子さん訳の本のなかではそんなこと微塵もありません)が夜空を歩いているところ、おばあちゃんがお月さまがさみしそうとふといったことをきっかけに、少女がおつきさまへキスを贈る…というのがこの物語です。この少女の優しさというのが、短い絵本の中でもしっかりと感じられます。
例えば、お祭りで人が多い道を友だちと歩いているときにはぐれていないか気にかけて振り向いたり、声を掛けたりすることがあると思うのですが、そういう風に、空にいるお月さまがさみしくないように、少女は気にかけはじめます。
相手は人間ではなく、お月さまです。月がさみしがるわけないと思ったらそこで終わってしまうところを、人同士のようなあたたかい関係に繋げているところが、個人的には日本人の感性に通じるところのように思えますし、お月さまに感情ありきの言葉を投げかけるおばあちゃんの感性も実は、すごく大事なところだと思っています。
ということで今日は、お月さまを見たとき、ちょっとだけ、月が微笑んでいるのか、かなしんでいるのか、楽しそうにみえるのか、自分の目でどういう風にみえるのか考えてみるのを夏休み最終日の宿題としたいと思います。みなさんが月を見るのを楽しめる夜となりますように。
ではでは、本日はこれにて!また次回もよろしくお願いします。
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【おでん文庫】9月のテーマ ”月さんお星さん" - おでん文庫の本棚
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