おでん文庫の本棚

大人もこどももみんなで味わう児童文学をご紹介

息子のまなざし。父親のやさしさ。

 こんにちは!7月が始まったばかりだというのに、夏の暑さがこたえますね。毎日アイスクリームを食べたい誘惑にかられています。先日読んだ片山 令子さんの『惑星』の本の中にアイスクリームを作る話があったなぁ。子どもの作者とお父さんとの交流が描かれていました。父親と子どもの交流というものは、子どもの好奇心にこたえるようなところがあるなあと思ったものです。

 

 おでん文庫の本棚は7・8月のテーマ【ここにある海】で、山下 明生さんの本をたくさん紹介していきます。その中で、本日紹介するのは、父親と息子のあいだで繰り広げられる物語です。

 

 『ふとんかいすいよく』

 山下 明生 作 渡辺 洋二 絵

 

 この本のあとがきを読んで、どんな経緯でこの父親が描かれたのかを知りました。父親の存在が子どもの頃の作者にとって、必要であったことがきっと幾度もあったのだと思います。

 

 この物語は父親と息子の交流が描かれていますが、男の子の立場と、自分のような女子の立場とでは、父親の感じ方は違うものでしょうか。子どもの頃の父親と言えば、私は遊んでもらった思い出が多いです。テレビゲームもそうですが、川のバーベキューや海水浴、おひげのじょりじょり攻撃や高い高いされていた思い出など。

 

 そういえば、父親の仕事場を見学したこともありました。父親の仕事場での姿も家での姿も、場所でその人の雰囲気が変わる印象はなくて、父親は父親でした。ただ、黙々と目の前のものに打ち込んでいました。

 

 成長をしていくと、人の表情や仕草で、自然と受け取る情報が出てきます。そうした言葉ににじみ出ない部分は、繊細に受け取るものはさまざまな想像を駆り立てます。言葉や行動で伝わってくるものでいうと、例えば学校のクラスの発言力のある優等生タイプ、だったり、足が速い運動得意タイプ、だったり、ドラマの登場人物の紹介文のようなものかなと思います。

 

 そうした言葉や行動からの分析については特に、成長するほど自分の言葉に出来るようになる気がします。ただ、言葉や行動の裏側となると想像を働かせないといけなくて、文章の行間を読むようなイメージに近いです。表情や仕草なども、そうした想像力に試されるものに近い気がします。正解は分からないけど、そこに何らかの雰囲気が漂っているのです。

 

 そうした、大人でも想像力を働かせる部分と、子どものまだ言葉は未熟で説明は出来ないけど感じとるもの、というのは近いものがあるのかな、と考えています。そのもやのようなナゾについて。誰かとのコミュニケーションの中で、相手に感じるものを、さっと結論付けるとそこで2人の間の物語がいったん完結するような感覚があります。

 

 例えばTwitterである人が「今日はそばを食べたい」と呟いた時、それを受けた自分は、暑いからそばを食べたいのかなあ、とか、その日が休日ならどこか美味しいところに食べに行きたいのかなぁと相手のことを思い巡らしている時間は、一方的にしても、相手と交流している時間のようにして物語が続いていきます。それが、そば自分も食べたいなあ、とか、暑いとそば食べたくなるよね、と自分事に紐づけて結論付けると、そこで物語は完結してしまうような気がします。

 

 そうした、息子が父親に抱いた、言葉に出来ない雰囲気のようなものを抱えるところから物語が進行しているように自分は思っています。息子は父親のことをよく見ているのです。そうした息子の様子を父親は知ってか知らずか、母親が留守の間に、中耳炎でプールに行けない息子のためにふたりで楽しいふとんかいすいよくの時間を過ごします。

 

 この、息子と父親がそれぞれに抱えている言葉に出来ないものを、お互いに理解しているとは限らないけれど、側にいて、お互いを助け合っているところがこの本のすごくいいところだと思っています。

 

 例えば自分が悩みを抱えている状況で、その悩みを友だちに打ち明けはしていませんが、友だちと他愛ない話をしている中で励まされることがあります。そうしたように、この物語も、父親が息子を元気づける物語のようでありながら、父親も息子との交流を通して、元気をもらっているのです。そして息子も、元気になった父親を見て嬉しそうです。

 

 さらに書くと、ふとんを海にみたてた発想や、挿絵の美しさなど、さまざまなものがからみあって、読み応えのある大人にも子どもにもおすすめの絵本です。本に書かれていたことメモをしそびれてしまったのですが、ネット情報によると、たくさんの方がおすすめしていたことが分かります。

 

 第24回青少年読書感想文全国コンクール課題図書
 全国学図書館協議会選定図書
 日本図書館協議会選定図書
 厚生労働省社会保障審議会推薦図書

 

 初版は1977年で、たしかに昔を感じる風景や服装ではありますが、海の景色は今と変わらずにあります。絵がほんとうに魅力的で、本を手に取って感じてみてほしいです。

 

 それでは、また次回もどうぞよろしくお願いします。

 

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おでん文庫のリアル本棚については下記よりご確認いただけます。

【おでん文庫】7・8月のテーマ ”ここにある海" - おでん文庫の本棚

 

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