おでん文庫の本棚

大人もこどももみんなで味わう児童文学をご紹介

火山の活動がわかる絵本

 こんにちは!最近はあたたかさが増して、コートを羽織らなくとも過ごせるようになってきましたね。草むらで黄色い花を発見すると、春の色見つけた!と心の中で反応しています。

 

 本日は、生きている地球を感じる火山の絵本のご紹介です。

 『火山はめざめる』

 はぎわら ふぐ 作 早川 由紀夫 監修

 

 火山が"めざめる"、という言葉を聞いてどんな気持ちが湧いてくるでしょうか。地球そのものを生きものとして捉えた表現に好奇心が広がることもあれば、火山が噴火するのかと想像して恐い、もしくは山が咳込んだのを見たことがあるという意見が飛び出すこともあるかもしれません。

 

 私は火山というと、恐竜が生きていた時代を想像します。恐竜たちの背景にある火山からは、火の玉がビュンビュン飛びだし、マグマが常時流れ出ている、それはもう想像力どっぷりの世界です。想像の中では”めざめる”どころか不休の活動にも及ぶ勢いですが、実際の”めざめる”火山はどのくらいの規模なのか、火山の活動はどのようなものがあるのか、この絵本に触れることで見えてくるものがありました。

 

 絵本では、実際に群馬県と長野県にまたがり存在する浅間山を取り上げています。遡ること2万5000年前から現在に至るまで、火山活動のあった時代にタイムトリップをしながら、火山やそこで暮らす人々の様子を伝えています。絵本のサイズは27×24cmと大きく、全てのページが見開きで描かれているのでとても迫力があります。

 

 火山の活動については危険度による判断基準があり、その状態によって今は入山は不可など知ることはありますが、火山灰や落石注意といった文字や、山の写真・動画から伝わってくる情報はありつつも、想像で補いづらい部分もあるように思います。煙が目に入ると痛いのは、煙が目の前にあってやっと実感するように、火山がどんな風に暮らしに関わってくるのか、それは火山が身近にある暮らしの中で得る経験となります。では、実際火山の近くで暮らしていない人はどうして知ることが出来るのかと考えた時に、この絵本は火山の活動に限らず、山のふもとで暮らす人々を一緒に描くことで、読者が火山の体験を自身の暮らしと繋げて想像を広げることができ、実感をしっかりと持たせてくれます。

 

 そして同時に、この絵本は昔の人達が残していった体験を知ることにも繋がります。嘘ではない出来事を知ることを時には恐く思うこともありますが、本を通して得る体験から自分の考えを生み出して、それが何かの答えに繋がったら、ぶれずに強くいられるのではないかと思います。

 

 ちなみに、日本には100を超える火山が存在するそうですが、浅間山は日本で初めて火山観測所が建てられた山だそうです。火山観測所で思い出すのは宮沢 賢治 作のグスコーブドリの伝記です。この物語は自然と人が共存する考え方が根っこにあるように思えて、この絵本で火山に興味が湧いたら、こちらも読んでみてほしいです。

 

 それと、群馬県には火山から流れ出して固まった溶岩が見られる場所があるそうです。”鬼押し出し”という名称がついており、画像で見ると尖った先のある岩がごろごろと密集していて、なかなかお目にかからない光景です。こちらはアイスランドの地形と様子が似ているそうで、そんな風に聞くと鬼押し出しをいつか見に行きたくなります…!

 

 紹介が続きますが、絵本を読むにあたり、こちらの本も併せて読みました。

 『あしたの火山学 -地球のタイムスケールで考える-』

 神沼 克伊 著

 

 より詳しい火山の活動や、形状・爆発の種類など優しく語りかけるように解説しています。知識ゼロからでも読みやすかったです。地球と人のタイムスケールを考えると、火山は人間より遥かにのんびりしたものです。

 

 次回もおそらくおでん文庫の本棚にある本を紹介します。3月テーマの本はあと3冊!またどうぞよろしくお願いします。