おでん文庫の本棚

大人もこどももみんなで味わう児童文学をご紹介

解き明かされるのは心のヒダ?

 こんにちは!最近一段と冷えてきましたね。お家にこもる時間の読書、ワクワクして体があったまる本を今月は紹介していきます。

 

 12月のテーマ”ナゾ かいけつ?”で最初にご紹介するのはこの本です。


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 『ニレの木広場のモモモ館』

 高楼 方子 作 千葉 史子 絵

 

 作者の本とのはじめての出会いは、以前このブログでも紹介をした

『グドーさんのおさんぽびより』でした。

なかよし3人組のちょっと照れくさくて可笑しい日々 - おでん文庫の本棚

 

 佐々木 マキさんの描く、性別も年齢も関係なくつるむ3人組の絵にひかれて手に取ったのですが、物語もとても好ましかったです。

 

 勘違い、物忘れ、疑り、などなど、誰しもがやったことのある(自分はやりがちです)ちょっと恥ずかしい経験を笑い話として描いている、一見マイナスにとれそうな事柄を3人組はなんにせよ受け止めてくれる、という寛容なところを作者の中にも感じて、好感を抱きました。

 

 自分が人付き合いがちょっとでも得意であったら、もしかしたらこの本を読んでも琴線にピンとこなかったかもしれませんが、1回のしくじりをいじいじと考えてしまうような者にとっては、3人の伸びたり弛んだり弾んだりしながらも繋がっている関係に憧れが湧いてくるのではと思います。

 

 タイムリーな話では、南と華堂(なんとかどう)さんで棚を借りている方とお話をしたときにお薦めしていただいた、多部 未華子さん出演のドラマ「いちばんすきな花」でも、人との関わりを題材として挙げていると思います。

 

 現在では、さまざまな考え方を持った人が存在していて、それを認め合おうと考える人も多いと思います。そうした中でも、きっと昔も今も同じように、価値観を共有できる誰かと出会いたいと思う気持ちが誰しもにあるような気がします。(といいながらこんなの自分だけだったりして…)

 

 ドラマでは2人になれないひとり×4人が運命的な出会いをしますが、人に価値観を押し付けず、共感をできる仲間として成り立っているこの4人がとても貴重な関係に思えてきます。恋愛感情に振り回されず今の関係=友情を大事にしようとするところも、新しい価値観を打ち出しているように思います。

 

 そうした男女のボーダーライン無しに長く続く友情というものを続けていくのか、ドラマの展開が気になるところですが、個人的には変わらない友情もしくは関係が永遠であると思える未来を、期待したい気持ちが無くもないです。そうした理想的な関係を漂わせているのが『グドーさんのおさんぽびより』の3人組でもあるわけです。

 

 前置きが長くなってしまったのですが、作者の本ではそうした人と人との関係性や、心の機微などを繊細に捉えて描いているように思います。口に出す言葉と心が裏腹であることが、文章の行間を読む、といったかたちではなく、しっかり文章で書いているので、子どもにも理解がしやすく、心の変化をとらえやすいところがあります。

 

 だからこそおすすめしたいと思うのが、今回紹介する本になります。

 

 転校生の主人公の女の子がそこで偶然に出会った仲間たちと、町の人たちに向けて壁新聞を作ることになるのですが、町で起こった事件のナゾを追うことになっていきます。

 

 主人公として立っている女の子がいるのですが、並行して登場人物たちそれぞれの物語が動き出し、絡み合っていくのをハラハラしながらページを捲っていくことになるのが、高楼ワールドといいたくなります。この絡み合ってラストへ向かっていく展開が他の本でも見て取れて、そこに自分はとてもワクワクします。

 

 そうしたさまざまな登場人物の中には事件の犯人と呼べる、一般的にはあってはならない”悪”という存在が現れます。この悪の存在をどう描いているのか、というのが個人的にこの本の見どころです。

 

 多様な価値観を持った人たちがいるという話を前置きにしていますが、正義と悪というのは、履歴書の経歴に載るか載らないか、と同じような、どことなく2極化される印象があります。

 

 例えば人事をする立場の人は、100通来た履歴書に目を通すとき、出来れば車の免許がある人を採りたいと思えば、履歴書で車の免許を持っていない人というのは、脇によけて、それ以上に時間割いて考える時間は取らない可能性が大きいと思います。

 

 そういうものと犯罪とを同じ価値観に並べることはもちろんできませんが、人生が良くも悪くも死ぬまで続いていくと考えたときに、この紙の上での自分の経歴というものが、事務的に書かれたものでまとめられて、それ以上でも以下でもない、というのが切ないなと感じることがあります。そうしたモヤモヤに対して、作者の物語は、紙の上にはない部分を大切に扱っていることが感じられて、多分、自分は慰められているのだと思います。

 

 誰かを理解することって、どういうことなんだろうと悩んだときにも、なにかしらきっかけが掴めるのではないかと思います。と書いている私の感想は重たいかもしれませんが、どちらかというと明るいタッチで読みやすくなっており、大人ならさらっと一読できるのではないかと!

 

 それでは次回もどうぞよろしくお願いします。

 

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