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山の頂上を目指して全8巻と続く旅

 こんにちは!いつもこの前置き部分の文章を最後に書いているのですが、前回の記事の更新のときに書きかけのままアップしていました。うっかりです。次回から気を付けます。

 

 さて、本日紹介するのは14匹のねずみシリーズでご存知の方も多い、いわむら かずおさんの本です。

 

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 『トガリ山のぼうけん① 風の草原』

 いわむら かずお 作

 

 このブログの一番最初の記事で紹介したのが、いわむら かずおさんの絵本だったですが、今振り返ると懐かしいです。最初に書く記事は日本人の作者の本にしようと決め、出来る限り作者のことを調べた上で書こうと意気込んでいました。とはいえ、文章を書いてまとめることをこれまでの人生でほとんど行ってこなかったので、当時に書いたものを今見直すのはとても恥ずかしく、リンクを貼るのは控えようと思います…。

 

 その当時から栃木県にある「いわむらかずお絵本の丘美術館」へ行きたいと思いながら実現せずにそのまま今に至り、いつかの日を楽しみにずっと胸に留めていました。それが、少し前に友人から美術館の近くへ寄ったお土産にと、秋めいた色の美しいポストカードと14ひきのねずみのノートをもらい、気持ちがちょっと浮かばれるといいますか、とにかく嬉しかったです。12月になるまでずっと机に飾り、日々励まされていました。その隣には人形劇の友人から届いた、目がくりっとして少しふてくされたような顔をしたぬいぐるみのポストカードを置いて、この2つのアンバランスも楽しんでいたというのも、書き添えておきます。

 

 いわむら かずおさんと言えば14匹のねずみの絵本の人という印象が強かったのですが、今回紹介する本は読み物としても充実した本となっています。それに本全体の完成度も、時間をかけてよく考えて作られているのが伝わってきます。

 

 詳しくは追って書くことにして、上に書いているように、絵を描く人としての印象が強かったのですが、『ひとりぼっちの さいしゅうれっしゃ』という絵本、ちなみにこれが今調べて絵本と知りましたが、読み物として文章にのめり込んで読んだので、絵本ではなく読み物だと勘違いしていました。

 

 この絵本は、これまで知っていた14匹のねずみのシリーズのような幼児向けの絵本よりも対象年齢を、自分の体感としては小学校中~高学年くらいまで上げた作品となっており、訴えてくる内容はさらに上の大人にまで通用すると思います。人間社会がこちらの都合で自然を壊していることに対して警鐘を鳴らしている、そんな内容に感じました。

 

 背筋がぞくっとするような緊張感が張り巡らされており、そうした演出効果が文章からだけではなく、よく練られたページの構成によって演出効果を盛り上げています。雰囲気が全然違いますが、14匹のねずみとこの絵本の根っこにある、自然との親密さがあるところに作者を感じさせます。

 

 そして、今回紹介する本についても、本を読む人のことを第一優先にして、よくよく考えて作り込んでいることが伝わってきます。子ども向けの本作りについて考えたいと思っている人には、個人的にはいわむら かずおさんの本をお薦めしたいです。

 

 今回の読み物は、文字量が幼児向けの絵本よりもずっと多く、確認したところ135ページありました。それに加えて、本文の各ページ見開きに(おそらく全てに)鉛筆で描かれた見ごたえのある挿絵が入っています。

 

 通常ではこんなに挿絵を挟むことは考えられない気がする(効率の話で言えば時間が掛かりすぎる)のですが、それをしてみせたところに、制作への意気込みを感じます。

 

 実際の作業として、本文の内容(文章)と入れたい絵の位置が見開きで一致するようにすることがまず大変そうに思えます。それに、各見開きの絵を入れる位置やサイズも、制作上の都合ではなく、必要なバランスを考えて作られているので、その調整の繰り返しが何回発生するのでしょう…本当に想像するだけでもとてつもなく大変そうで、なんだか考えいると肩に重しがのしかかってくるようです。

 

 見返しについてはカラーの絵が全面に描かれていて、豪華です。それも前と後ろで違う絵で、尚且つ前と後ろで合わせて2枚、ではなくそれ以上の見開きカラーがあります。

 

 さらにさらに、この本は全8巻のシリーズもの。公式では全8巻を1991〜1998年に刊行したとあり、個人的にはこのペースはとても早いように思ってしまいます。

 

 物語は、トガリネズミのトガリィが一人前のネズミになるために、トガリ山のてっぺんを目指した冒険を、こどもたちに語って聞かせる回想録となります。

 

 てっぺんがどうなっているのか、出会う動物や昆虫たちも知らない。ナゾにつつまれた山なのです。自然の中をネズミのサイズになった気分で、広大な景色を冒険していくのは迫力あり、そして目に映る植物や出会うものたちへの好奇心も光ります。子どもなら冒険物語を純粋に楽しむのだと思うのですが、大人は本の作りから構成、見せ方、絵、さまざまな点でこの本を見るのが楽しいと思います。

 

 本を褒めちぎってまるで通販番組の宣伝のようになってしまいましたが、読み手のことを第一にして、よく考えて作られたこの本を少しでもいろんな人に知ってもらえたら嬉しいです。

 

 14匹のねずみの絵本を読んで大人になった方は、懐かしい気持ちでこの本を楽しめると思います。トガリ山についても、誰も知らないてっぺんのナゾを追って、全8巻を追いかけるのもまた楽しです。

 

 ではでは、次回もどうぞよろしくお願いします。

 

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