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3つの児童文学賞をとったスイスのおすすめ本

 こんにちは!今日は本を紹介するにあたり、ずっと哲学について頭を悩ませていました。悩んで頭が燃えカスになっただけで、一日が終わりました。

 

 そんなこんなで、本日紹介するのはいつか本棚に置きたかったスイスの作家の物語です。

 

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 『まだ世界が若かったころ』

 ユルク・シュービガー 作 ロートラウト・ズザンネ・ベルナー 絵 松島 富美代 訳

 

 9月の本棚テーマ【月さんお星さん】で紹介をしている本の中で、今回は少し変化球の本になります。1冊で1つの物語が紡がれているのではなく、さまざまな短編(短くて3ページというのも)がある中に、星が登場する物語があります。

 

 タイトルの『まだ世界が若かったころ』というのも、なんだか澄み渡った夜空がみえるような、世界の初々しさを感じるところがあるように思います。

 

 と、半ばこじつけのように選んだ本となっていて恐れ入ります。何かをきっかけにいろんな人に知ってほしいと思っているこの本を今のタイミングで紹介することにしました。

 

 この本と出会ったきっかけは、コロナが始まったときに自然豊かなスイスの物語『ハイジ』を読んだことから始まりました。自然豊かなスイスの世界が、当時の家に閉じこもってばかりの閉鎖的な気分を慰めてくれたことで、そこからもっとスイスの自然に触れる本を求めて、結局いろいろ寄り道しながら本を探しては読んでいました。

 

 パストラル(ラミュ)の本、スイスの裏の顔を描く『黒いスイス』、時計産業に触れた『スイス時計紀行』など、これまで国に標準を合わせて読書をしてこなかったので、国民性や物語の傾向など、少しずつ見えてくるのがなんだか楽しくなってきていました。

 

 スイスの立地は、ドイツ・フランス・オーストリア・イタリア・リヒテンシュタインと隣接をしている内陸国になります。まだ国の境界線がはっきりと定まっていなかった時代を仮に想定して本を読む方が入り込みやすいかもしれません。地方によって伝わっている民話や物語が、フランスに寄りか、はたまたドイツかイタリア寄りかで、なんとなくその傾向が見えてくることもありました。スイスで話される言語である、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語と、隣接した国のどの言葉が使われているか意識することも、傾向を掴むひとつの手段になると思います。

 

 そして、そうした地方ごとの傾向とは別に、全体的にこれはスイスらしさといえるのかなと思うところもあります。民話の最後のオチで、富や名声よりも、一定水準の豊かな生活・安定といった、暮らしやすさを求めている点です。

 

 貧乏から成り上がるチャンスをいともあっさりと棒に捨てたり、お姫様との結婚のチャンスをお断りして地元で家族と仲良く暮らす方をあっさりと選んだり、厳しい山と風土によって、作物を育てるのが厳しい環境でありながら、自分たちの土地から離れようとはしなかった人々の気持ちが見えてくるようでした。

 

 そこで、この本の作者はというと、1963年にスイスのチューリッヒで生まれ、大学でドイツ文学や心理学・哲学を学び、作家兼心理セラピストとしてチューリッヒに住んでいるそうです(2001年・本の発行時の情報)。

 

 ドイツの児童文学というと、ミヒャエル・エンデエーリッヒ・ケストナー、物語だと『クラバート』がぱっと思い浮かぶのですが、みなさんにも思い浮かぶ作者や物語があるでしょうか。

 

 ドイツの物語は、子どもの頃にTVで見ていた戦隊もの魔法少女の溌剌とした雰囲気に慣れていた自分にとって、子どもの頃に読んでいたら多分、落ち着いた雰囲気と、すこしずつ足元が見えてくるようなじわじわした展開に、ついていけなかった気がしています。

 

 大人になってエンデを読んだときは、『モモ』の時間泥棒にはだいぶハッとさせられました。この物語のように、大人にも通じるもしくは訴えようとしている何か大事な核心を描いていることが、大人にも読み物としてもおすすめしやすい児童文学ということで、特にドイツの児童文学にはそうした印象を勝手ながら持っています。

 

 ただ、そうした大人にもおすすめしやすい作品として横並びに思いつく作品は他にもあります。例えばオランダの作家で『はりねずみの願い』を書いたトーン・テレヘンさん、シリア出身でドイツの作家ラフィク・シャミの『空飛ぶ木』、魚住 直子さんの『クマのあたりまえ』などです。

 

 これらの本には共通して、心理学か哲学といったあおり文、もしくは作者がそうした勉強をしていることが共通しています。心理学や哲学を勉強をしていないので、はっきりと傾向を言葉で表すのが難しいのですが、読んで共通しているのが、国という国境関係なく、万人(大人にも子どもにも)に共通して理解しあえる内容が描かれていることだと思います。

 

 誰だって人と無暗に喧嘩はしたくない、孤独が怖い。など、そうした感情はおそらく人間なら誰しも思ったことがあるのではないかと思います。そうした私の安直な例え話とは段違いのレベルのできごとが本の中で起きています。

 

 この普遍的で哲学を感じることのある大人にもおすすめの本として、私は上で紹介した本たちの横並びに、今回紹介する本も入ると思っています。

 

 それでいて、スイスのこの本は遊び心が弾んでいます。全てが哲学的というよりも、「マザー・グース」のような突拍子の無い設定や、不思議で掴めないけど面白い展開(それか深い意味に気が付いていないだけかも)、表紙の絵のようにとてもユーモアのある作品です。

 

 ドイツ児童文学賞、スイス児童文学賞、オランダ銀の鉛筆賞を受賞していて、太鼓判はしっかり押されています。いろんな人に気が付いてもらいたいこの本、良かったら手に取ってみてもらえたら嬉しいです。

 

 さてさて次回の本で9月の本の紹介は最後となります。10月の本も考え始めているのですが、最近はいつも入れる本をぎりぎりまで頭の中で入れ替えたり、新しい風を吹かせたり、バタバタしてしまいます。ちゃんと間に合わせなければ。それでは次回もよろしくお願いします。

 

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【おでん文庫】9月のテーマ ”月さんお星さん" - おでん文庫の本棚

 

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