おでん文庫の本棚

大人もこどももみんなで味わう児童文学をご紹介

星を掴む子ども

 こんにちは!先週末にコロナになり、今週はブログ更新をお休みするか悩んでいたのですが、書きたくなって、更新しちゃいました☆

 

 9月の本棚テーマ【月さんお星さん】のラストは希望の星の本です。

 

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 『片手いっぱいの星』

 ラフィク・シャミ 作 若林 ひとみ 訳 太田 大八 装丁

 

 片手いっぱいの星。かみしめたくなるタイトルです。手の届かない場所にある星、そういう遠くにある存在だからこそ夢や願いを託すこともあるのだと思うのですが、そうした物理的な障害をひゅんと飛び越えて、星を掴んでいる子どもが、キラキラして目の前に現れました。

 

 このキラキラした星、掴むか掴まないか選択肢が選べるとして、気軽に掴むことはできるでしょうか。本の対象が中学生なので、中学生の頃の気持ちになって考えてみると、世の中にも自分にもあんまり期待していない擦れた考えが前に出て、キラキラに手を伸ばすことをおっかながる気がします。キラキラすることって、誰にも迷惑かけることでもないし悪いことでもないですが、そこには保証が無い、という消極的な考えによってブレーキが掛かります。

 

 これが今のSNSが流行している時代に生まれていたら、さらに目に見えてキラキラしてみえる世界と自分との間に大きな溝を築いてしまったようにも思います。それこそ、お星さまみたいに遠い存在のものを目で追っているだけのような。自分にとって本当に大切なキラキラが何かもわからず漠然と話題のものを見て、自分は特に何もせず、日々が過ぎていく中でずっとモラトリアムしてるというね。書いてて自分の胸に刺さります…。

 

 自分が変わるきっかけは、大人になってからの人との出会いが大きかったように思います。人との出会いによって、自分は世の中へ何ができるのかをよくよく考えるようになり、それがこのブログでの本の活動や、絵を描く活動などに繋がっています。

 

 他の人からしたら、立派な肩書も認知度も無く実りの無い活動と見えるのかもしれないのですが、人を納得させるためにしている活動なのか、自分が納得できる活動なのかで考えたときに、自分のことを優先して考えることが出来るようになっている自分を発見できるようになりました。

 

 こうした変化がもし、自分の中学生の頃に人との出会いで起こっていたら、どれだけ良かったんだろうと思うこともたまにあります。

 

 自分の置かれた立場や境遇によって、そもそもそんな夢をみる余裕も時間もお金も、なにもない、という場合もあるかもしれません。人よりもすごい遠回りをしている自分を、他と比較して苦しんでしまうこともあると思います。でも、一呼吸おいて、周りを一回忘れて、ほんとに自分にとって大切なものが何かを探してみてほしいです。

 

 この本を読んだときに、主人公を導いてくれる存在の登場や、主人公が好きなことを見つけて磨いていく姿、使命感を持った行動など、自分の実体験と重ねて、起こった変化と多少なり重なる部分を感じました。でも、私が大人になって起こった変化と、子ども時代に起こる変化の勢いは全然違います。キラキラして見えます。

 

 この本を読んで自分は、星は外からやってきたのではなくて、手の内側から広がってきたように感じました。主人公の行動がまわりに変化を与えていったので、手に掴んだ星は、きちんと自分のものだといえると思います。

 

 主人公の置かれている状況は、ほんとうに試練が多いです。そこも大事な要素だと思います。私は境遇に文句をたれて行動せずだったので、主人公には頭が上がりません。耐えるだけではなくて、耐えながら希望を持ち続けるという姿勢が必要でした(反省点)。

 

 コロナ禍でリアルに人と会う機会が減った状況でも、こういった心を育ててくれる本が成長の支えになってくれるはずなので、モラトリアムに悩んでいる大人も子どもも、ぜひ手に取ってみてほしいです。

 

 1988年初版だそうですが、年代を感じさせない読みやすさです。日記形式で綴られてい本はあまり読んだことがなかったのですが、最初は読みづらいかもと構えましたが、少年が少しずつ成長していく姿が文章にも感じられて、より気持ちが心に入りやすかったです。

 

 そしてこの本の舞台は、作者が幼少期を暮らしたシリアでの暮らしを思い出しながら描いたそうです。世の中のイメージにあるシリア以外の面も知ってほしいという想いがあり、そういった意味でもぜひ読んでみてほしいです。

 

 私自身、その後いくつかシリア関連の本を読んで、知らなかった国民性や、暮らし、建物や社会情勢など、様々な面を知る機会となりました。友人が昔、シリアのお菓子をくれたことがあり、こんな雰囲気の中で作られているのかなあと、懐かしみながら想像膨らませていました。

 

 ではでは、9月のテーマ本紹介はこれにて終了となります。次回のブログ記事は10月のテーマ紹介になる予定です。10月の本もかなり選出に迷いましたが、やっと決まりました。今年もあと3か月ということで、たとえ息切れしたって最後まで駆け抜けていきたいと思います。次回もどうぞよろしくお願いします。

 

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【おでん文庫】9月のテーマ ”月さんお星さん" - おでん文庫の本棚

 

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