おでん文庫の本棚

大人もこどももみんなで味わう児童文学をご紹介

なかよし3人組のちょっと照れくさくて可笑しい日々

 こんにちは!本日こちらは涼しい風がとおり、まぶしい青空が広がっています。外を歩いていたら、これから紹介する本のタイトルをふと思い出しました。こんなとき、友だちが近所にいる本の中の彼らがうらやましい~。自分はせめておばあちゃんになるころには、近所に茶飲み友だちでも出来て、お互いしょぼしょぼの目で本の読み合いっこでもしていたらいいなあ。

 

 さて本日紹介するのは、なかよし3人組のちょっと照れくさくて可笑しい日々を描いた物語です。

 

 『グドーさんのおさんぽびより』

 たかどの ほうこ 作 佐々木 マキ 絵

 

 ところで、この本は英語のタイトルも明記されており、それは"Perfect Day For A Walk”。Perfectという単語からくる"完璧"という印象と、相反して作中の3人組のやらかし珍事が響き合っているように見えて、よりおかしみが湧いてきます。

 

 表紙の絵は佐々木 マキさんで、物語に登場する仲良しの3人組がおしゃべりしながら散歩している姿が描かれています。背も顔も縦長いおそらく青年のグドーさん、鼻も丸くて顔も丸いグレイヘアーのイカサワさん、9歳のポニーテールの女の子のキーコちゃん。この3人組の日々が、短編というかたちで春夏秋冬の1年を通して描かれています。

 

 この本を手に取ったのは表紙の絵に惹かれたのが大きかったのですが、たかどの ほうこさんが描く人物の個性を目の当たりにして、佐々木 マキさんのキャラクター化した絵がぴったりだということが分かりました。まだ、著者の読めていない本もいっぱいありますが、これまで読んだ中で気が付いた著者の好きなところは、魅力的な人物を複数登場させて、絡み合っていく様子です。

 

 ちなみにみなさんは、たかどの ほうこさんの本は読んだことがあるでしょうか。私はは恥ずかしながら、たかどの ほうこさんの本はこちらが初めてで、軽快な作風が持ち味と思っていたのですが、後から読んだ高楼 方子と漢字名義で書かれた『ココの詩』という物語のトーンは今回紹介する本と異なります。人形の少女の切ない初恋がやがて事件に巻き込まれ、裏切り・友情・恋といった入り組んだ事情をどんどん絡めていきます。登場人物たちが抱えている白黒のつかない曖昧な感情をそのまま持ち続けるという描写は、大人の本に限らず、児童文学でもあるのだということを改めて意識しました。

 

 そうした面も知ると、この本を再読したときに、たかどの ほうこさんの特徴というのもいくつか考えてみたくなります。

 

 例えば、悪いやつはいても嫌みなやつはいない。『ココの詩』や他の本で悪いことをするやつが出てくるのですが、それでもちょこっとでも良い部分も持っています。そういった良い部分を見せられるからこそ、自分の価値観や判断に広がりが出てくるように思います。アン〇ンマンのように正義と悪が分かれて悪が懲らしめられていても、バイ〇ンマンを悪と決めて憎み続ける人を見たことが無いし、正しい基準がきっかりあって世の中まっすぐで生きようとしても、社会に出るとますます、正しい悪いの基準以外のベクトルがいくつも見えてくる…そして悩みは尽きません。

 

 『グドーさんのおさんぽびより』では悪いやつは出てきませんが、超善人がいるわけでもありません。よくばりだなあ、かっこわるいなあ、と思うところがありながら、どこか愛らしさを感じるキャラクターになっているのも、著者の味付けの塩梅の成すところだと思います。それにサブキャラクターは、堅物など一言でキャラクターを括れる分かりやすさがありますが、仲良し3人組については、もうすこし丁寧な説明を必要とする気がします。友人に職場の同僚ってどんな人かと聞かれたら、真面目でコーヒーを毎日飲んでエクセルが得意で~みたいに、よっぽど尖った性格でなければいろんな見えている特徴を連ねていくように、3人組も奥行きのあるキャラクターになっていると思います。

 

 そして、キャラクターの複雑に絡まる気持ちの描写の上手さが、本作ではすれ違いをおもしろく描く方向に働いています。すれ違いってなんで面白いんだろう。自分だったらへなへなと崩れ落ちたくなる恥ずかしいシーンも、他人事だと面白いのです。すみません。

 

 見栄っ張り、欲張りといった特徴をテーマにして、コテンパンに懲らしめられるのではないですが、痛快に描いている話もあります。上で書いた恥ずかしくなるシーンみたいにですね。ただ、そういった欲は良いことに繋がらないとはいえ、完全には消せるものでもないし、やらかした姿を見かけたら、笑い飛ばしてくれるのが救いな気がします。子どもも大人も一緒に笑って読んでほしいです。

 

 ということで、3人組のゆるやかな友情と愉快な物語を初夏の天気の良い日に読んだらそれは最高です。記憶に留めていただけたら幸いです。

 

 友だちがテーマの本の紹介は今回で最後となります。ほんとうに一か月があっという間です(毎回言いたくなるくらい早い)。来月のおでん文庫の棚は大好きなシリーズをひとつ並べる予定です。それと今後は本と一緒に手作り雑貨を並べようかと考えていて、そちらも着手していきたいです。置くのはまだ先になりそうですが、設置する際には報告します。

 

 それでは次回もどうぞよろしくお願いします!