こんにちは!冬の寒さが一段と厳しくなってきましたね。エアコンをガンガンにかけた暖かい部屋で読書といきたいところです(実際は、着ぶくれ雪だるまです)。
本を読むとき、ページをめくる手指がひんやり、しわしわしているのを、読み始めのタイミングでは頭の片隅で気にしているのが、読み進めるうちに、そんなことは忘れて物語へと意識が入り込み、とすると、また突然に指先に意識が戻ることがあります。読書は、現実と本の中の世界を行ったり来たりするなぁと、こんなささやかな出来事で例えたりするのは、軽々しいですかね。
本日紹介する本は、現実とも夢ともつかない不思議な世界を冒険する
W・H・ハドソン 作 西田 実 訳 駒井 哲郎 画
『夢を追う子(A Little Boy Lost)』
です。
こちらは「福音館古典童話シリーズ」の中の1冊に当たります。このシリーズ、本は紙箱に入っており、表紙は固く丈夫に出来ていて、サイズもA5程あります。装丁からして立派で、読む前に本をしみじみ眺めたくなります。
絵に関しても、表紙を飾る版画が美しく幻想的で、物語の世界に誘われます。
公式サイトにある本作のあらすじでは、"美しい蜃気楼にさそわれて家を離れたマーチン少年"とあり、本のタイトルをからしても、実在するマーチン少年が幻想世界に迷い込むような印象を受けます。それが、表紙の絵となると、マーチン少年の存在感がおぼろげです。
全面に描かれた木々や植物たちは、鬱蒼とした少しあやしい雰囲気はあれど、まっすぐに立ち伸びた木など生命力を感じます。その緑の中に迷い込んだマーチン少年らしき人は、輪郭だけの人影のように表現されています。これは、どんな見方があるのかなと考えてしまうのですが、ひとまず、物語を読む前にこの絵を見ると、このあやしい世界の扉を開きたくなることは間違いなしです。
物語の中に入っていくと、そこには、至って普通の両親のもとに生まれた男の子(私は小学校低学年くらいの年齢を想像しました)のマーチンが登場します。彼は、心の奥底から湧き上がってくる冒険心に掻き立てられるがままに、突然に、家から飛び出します。そして、行く先々でさまざまなものたちと出会います。それは、動物、精霊?人間?こういうときに、名刺交換の文化があると、相手の輪郭を掴みやすいですが、ここでは謎多きものたちが登場します。見たままのこと以上の情報は無い。確実に分かることといえば、そこに存在すること、目の前に崖があること、暗い洞穴があること、知っている植物が生えていること。
今、少年が立っている場所がどんなところなのか、自分が目で見て知っている世界をかき集めることで、そこに現実感として地に足が着きそうなのに、なにやら気持ちは落ち着きません。
そうして幻想の世界を彷徨う少年が大地を駆け回っているうちに、本を読んでいる自分の肌の感覚が、少しずつ敏感になっていきます。地面に頬を当てるときの感覚ってどんなものか、川の水はどのくらい冷たいだろうか。
こういうとき、ふと思います。好奇心のままに現実も同じことが出来たらいいのになぁと。しかし、本を読んでいて毎度気が付くのですが、普段の行動というのは、自分の中で制限をかけたり、意味が無いと思ってしまうことに時間を割こうとしないところがあります。
草むら寝転がりたくても、そこには犬のう〇こがあるかもしれないと思って避けたり、ぼーっとする時間を勿体ないと思ったり(スケジュール帳の空白を恐れる)。これらの行動を、あまり深く考えずに、頭が半自動でやらなくていいことに振り分けしているようです。
あまり深く考えていないので、本を読んでいると、なんだか嘘みたいに、自分が持っていないと思っていた純粋な好奇心とときめきのようなものが呼び覚まされていくように感じてきます。
本当は、知らないことがいっぱいあるのに、そこに目を向ける時間を勿体ないと判断して、なんとなく知った気になって、なあなあにしていることもあるかもしれないし、一見して無駄に思われる行動・時間が必要かどうかを人に尋ねられると、答えが難しいです。
半自動振り分け無駄なし人生(?)の自分でも、意味の分からない行動がひとつあります。「生きている」ことについて、動物は生きているとあたたかいのに、木は生きているのに冷たいのを不思議に思っています(感覚的な話です)。なので、木を触って、冷たさを確認するという謎行為をしています。その不思議と触れ合っている時間、それがなにかになるということではありませんが、なにかを心が納得するのか、触っている時間が好きです。
そういう、なにか得体の分からない不思議と、この本の少年が触れ合う自然を通じて感じるものが、どこか繋がっているように思えます。この本を読んでいると、自然に近づいていきたくなりますね。
この本について、もう少し書いていけたらと思うので、次回も続くと思われます。
それでは、次回もまたどうぞよろしくお願いします。