おでん文庫の本棚

大人もこどももみんなで味わう児童文学をご紹介

児童文学の扉を開くなら

 こんにちは!2月から3月にかけて、お仕事で異動の話を聞いたり、引っ越しのトラックが目に付くようになったりと、変化の訪れをちょっとばかりですが感じることがありますね。私も2月末から新しいことを始めた身、不安と反省の波にしばかれながらですが、残り半分となった3月もやれることをやろうと思います。

 

 ではでは本日は前回の記事に続いて、こちらの本を紹介していきます。

 

  『幼い子の文学』

 瀬田 貞二 著

 

 ↓前回の記事はこちら

翻訳で大切なことを勘違いしていたお話 - おでん文庫の本棚

 

 前回の記事は本について書く一歩手前のところで終わっていました。

 

 今回紹介する本の著者は『ナルニア国物語』シリーズや『指輪物語』など児童文学の翻訳に携わっており、児童文学関連本で名前を見る機会が増えていくと共に名前をよく知る様になったのですが、そもそも翻訳者への興味というのをどのくらい持つものなのだろうと、そこを切り口に前回はつらつらと書いていました。

 

 翻訳というものを原文に従って正しく正確なものを良しと想像していたのですが、子どもへの伝え方という目線が必要であると気が付いたとき、翻訳の難しさと奥深さにハッとなり、児童文学の世界を作る側の目線で知らなければと意識するようになります。

 

 そうしたいきさつがあり、児童文学を学ぶ本を選ぶなら翻訳者の本はきっと信頼がおけると思えて手に取ったのが、今回紹介する本になります。

 

 タイトルが簡潔で分かりやすいのも、手に取りやすいですよね。それでいて、表紙の情報がすっきりしている分、内容が専門的で厳ついのか、初心者でも読みやすいのか、ちょっとどんな風になっているのか気になります。本屋さんで見かけることがあったら手に取ってページをいくつかめくり中身を確かめていそうです。

 

 幼い子どものための文学、と聞いたときに、切り口をいくつか想像できるかもしれません。一番最初に思い浮かぶのは、分類に分けて紹介をしていく流れ。例えば国や地域毎(日本・イギリス・アメリカ・ドイツ…など)に分類ですね。もしくは、年代順に文学の歴史を辿る。日本と海外を比較して児童文学を語るというのも、あるかもしれません。

 

 ひとまずきっと触れているだろうと考えるのが、海外の児童文学です。児童文学というと、イギリスやアメリカ、グリム兄弟にちなんでドイツ、アンデルセンデンマークといった海外の文学に馴染んできた思い出があるので、あるかなあと想像します。

 

 実際、蓋を開けてみると、海外の知らない作家の名前がじゃんじゃんと、作品を引き合いにして登場していました。世界は広い、というより、広いのを知らなさ過ぎたために、途方もなく広い…。(この本を読んだ頃はアリソン・アトリーの本を読んだこともなく、今やっと読める箇所が出てきている状況です)

 

 しかし、内容が専門的で読むのが難しいのかというと、内容を理解するには時間が掛かりそうでも、初心者でも読みやすい内容となっています。というのもこの本の内容というのは、著者が児童図書館講座というのを開き、児童図書館員に話していたことが本となっているので、意味が分からないような難しい言葉が少なく、読者に語り掛けてくる様子が優しく丁寧です。

 

 内容についても、歴史をさかのぼったり作者のずらりと並んだ著作を細々解説といった全体を捉えるための網羅的な内容というのではなく、児童文学で大事と思える要点を据えて、各講座(各章)ごとに語られているので、要点がすっと入ってきやすいです。各章のタイトルも短い言葉で分かりやすく書かれているので、目次で何の話がされるのか理解しやすいのもホッとします。こうした気遣いや言葉選びから、すでに翻訳をするときの心がけが生かされているようにも思えてきます。

 

 学生の頃、茶道を習っていたときのことを突然例えで上げてみるのですが、一般的な勉強である様なテキストは一切なく、茶道というものうんぬんといった知識を付けるでもなく、ただただ、先生に見てもらいながらお点前の手順を何回も繰り返し、身体に覚え込ませる、というやり方でした。映画にもなった森下 典子さん著の『日日是好日』でも、茶道の世界が描かれているのをみると、自分が昔習ったこと重なるところがあり、特殊なものだなあと思いました。

 

 そういう、資格を得るために知識を蓄えていくことと違い、身体で覚えるということは、身体で感じるとも言えて、児童文学に限らず文学作品に触れるときの心が感じる、動かされるという感覚、感動する瞬間、もしくは身の毛のよだつ恐怖に興奮したり、そうしたことが物語を読むときの面白さのひとつだと思います。

 

 そうした心に届く物語を子どもの本で描くとしたら、どんなものが子どもに届くのか、子どもにとって良い本といえるのかを、著者が多くの本と子どもと触れ合った中での経験と発想を、分かりやすく丁寧に言葉にしています。著者の特に素晴らしいなと思うのが、言語化。説明が出来るのがすごい。

 

 そして伝えたい要点を説明をするにあたって引用する作者や本が豊富で、そうした紹介も刺激になります。実際に児童文学を読まないと始まらないので、読まなきゃ、と半ば義務的に思ってしまいそうなところを、この本から知る本は、読んでみたいという気持ちになるところがよいです。

 

 この本で紹介している本で、まだ読めていないものや、理解できていないところもまだまだありますが、ともしびのような期待感と燃えるような気持ちを与えてくれる、手元に置いていたくなる一冊です。

 

 児童文学のことを学びたいと思ったときに、個人的にはまずはこの本に書かれている児童文学の核心をついているような内容に触れて気分を高めていけたら読、書がますます楽しいのではないかと思います。

 

 ではでは、次回は火山の話か雑記を書こうと思います。次回もどうぞよろしくお願いします。

 

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