おでん文庫の本棚

大人もこどももみんなで味わう児童文学をご紹介

この本の面白さについて考えてみた

 こんにちは!めずらしく朝の更新です。昨日、SNSで早起きが苦手だとつぶやいたのですが、やることが詰まっているときと、図書館で借りた本の返却日が迫っているときは、なんとか起き上がります。今日の天気は晴れやかで、ほどよい冷気が肌に気持ちいいです。

 

 ではでは、本日紹介するのはこちらの本です。

 

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 『ふくろうくん』

 アーノルド・ローベル 作 三木 卓 訳

 

 がまくんとかえるくんシリーズの作者であるアーノルド・ローベルの味わい深い一冊です。作者の絵を見たことがある人は、表紙を見た瞬間に、ピンとくるのではないでしょうか。色の明暗を柔らかく表現していて、優しいですよね。それでいて、ふくろうくんの佇まいはなんだかユーモラス。夜の読書を連想させる絵というのがまた、じわじわと、どんな物語なのか好奇心がくすぐられます。

 

 それではと、いざ本を読んでみて考えるのは、これを描いたら面白い、みたいな作者の意識があんまり感じられない、という点です。ものつくりをする立場の人からしたら、主観で作らないのは当たり前かもしれませんが、客観的な目線でこう作ると面白いのでは、と閃いたのが、実は自分の主観で描いていることが自分自身、実際によくあります。自分が昔描いた漫画なんかは自己都合展開がくりひろげられて、描いてるときは面白かったはずが、後で見ると痛いです。

 

 この本はそうした作られた感じがなく、するりと読めます。そして、時間をおいても、また読みたくなる。一見、目立ったような派手さはないのに、どうしてだろうと考えます。

 

 というのも、グラフィックデザイナーである佐藤 卓さんの『塑する思考』という本を読んだことで、ものつくりの根本について気になっています。キャラクターも、佐藤 卓さんのものつくりも飾らないところがあります。

 

 佐藤 卓さんの物にとことん向き合っている姿勢から、ものを深く見ることができると、装飾が不要になっていくように思えてきます。本質を見極める目で世界を見ていくと、例えば物語ひとつを読むにしても、表に出てくるキャラクターの言葉そのものの意図を読もうとするのではなく、そうした言葉選びをするキャラクターのバックボーンに思いめぐらすのではないかと。

 

 例えば、企業の商品で使われているキャッチコピーが、言葉にバックボーンまで包括して伝わってくるもののひとつに思います。

 

 キャッチコピーですぐに思い浮かばれるのは、カルピスの「カラダにピース。」です。この言葉、誇大な表現もなしに、身体によい、そしてピースという表現にある溌剌とした明るさが出ていて、気持ちの良いメッセージです。

 

 このキャッチコピーをもし自分が作るのを任されることになったら、安っぽいキャッチコピーが出来上がること間違いなしです。自分の場合は、要素で物を捉えようとして、そこ止まりになってしまう気がします。

 

 例えば、白、乳酸菌、身体に良い、甘酸っぱい、健康、といった要素を組み合わせて言葉を作ろうと考えてしまいます。もしくは、白→ピュアと、要素からのイメージを連想して新たに語句を広めるといった手段をとります。

 

 そういう考え方もひとつ有りだと思いますが、今回考えるのは、この商品のバックボーンが何かということです。この商品をつくるきっかけとなった話を調べると公式HPで出てきました。

 

カルピス® | アサヒグループホールディングス

 

 このいきさつを知り、改めてキャッチコピーを読み上げた後に自分の並べた要素の見返すと、言葉が軽いというか、本質にたどり着けなさそうです。

 

 さらにこのキャッチコピーが秀逸と思われる点としては、こうしたいきさつを知らなくても、キャッチコピーで商品の価値を人に感じさせているところです。キャッチコピーがバックボーンとしっかり結び付き、表に出ている言葉は、その見えないバックボーンを滲み出している、その滲み出ているものを、人々は意識せずに感じとっているように思います。

 

 このキャッチコピーから滲み出ているというのが、この本でいうと、キャッチコピー=ふくろうくんの言葉、滲み出るバックボーン=ふくろうくんの人柄、です。

 

 ここまで考えてくると、骨太なキャラクターというのがどんなものか、さらによく考えてみたくなりますね。自分は表に見えるものをずっとこねくり回しているのが分かってきました。

 

 大人も子どもも、ちょこっと本を読みたいと思ったときに、この本はふと頭に上がってくるように思います。ちょこっと読書に最適で、しかも、何回繰り返しても面白く読めます。

 

 まだ説明が難しいですが、普遍的、という言葉を使ってよい物語だと思います。ひとまず、そういう本というのは、作者の主観で作られたものでないことは確かです。もっと、読めば読むほど、いろんなことが見えてきそうです。

 

 ということで、今回で11月テーマの”舞い込む”の本紹介は以上になります。そして、今頃になり『ふくろうくん』に何が舞い込んだのか描いていないことに気が付きました。ひとまず、その舞い込むに該当する物語は冬が舞台であることを書き添えておこうと思います。

 

 次回は今年最後の12月テーマを報告の予定です。12月にぴったりのテーマになっているはず!次回もどうぞよろしくお願いします。

 

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