おでん文庫の本棚

大人もこどももみんなで味わう児童文学をご紹介

ポルトガルから始まるココロオドル海と船の大冒険

 こんにちは!夜、寝つきが悪いとき、みなさんはどうしていますか。私は夜寝る前に考え事をすることが多いために、なかなか寝つきが悪い方です。ビデオテープの早送りと巻き戻しを繰り返してテープがそのうちキュルキュル悲鳴を上げていくような具合に、オーバーヒートしていきます。そうして熱くなった頭を冷やすためにどうするかというと、オードリー・ヘプバーンが歌う「Moon river」とエルヴィス・プレスリーの「Love Me Tender」を聴くようにしています。優しい歌声とギターの音がここちよくて、すーっと頭の中が真っ白になっていく不眠の救世主です。歌の力がこんなところでも発揮されていると思っていたら、今回紹介する本でも、船乗りのコックがなぜ口笛を吹くのか、というくだりがあり、ほほうなりました。本当か嘘か分かりませんが、面白いなあ。

 

 ということで本日紹介するのは、全5巻に渡って繰り広げられるハリネズミ・チコの大冒険です。


f:id:anko_tyk:20230701230154j:image

 『ハリネズミ・チコ1 ジャカスカ号で大西洋へ』

 『ハリネズミ・チコ2 大きな船の旅 ジャカスカ号で地中海へ』

 『ハリネズミ・チコ3 空とぶ船の旅 フライパン号でナポレオンの島へ』

 『ハリネズミ・チコ4 空とぶ船の旅 スターライト号でアドリア海へ』

 『ハリネズミ・チコ5 小さな船の旅 パピヨン号でフランス運河を』

 山下 明生 作 高畠 那生 絵

 

 表紙のユーモアと愛嬌のあるハリネズミに惹かれて手に取った海と船と運河の大冒険シリーズ。写真の左上が第1巻で、zの並びで順番になっています。夏休みのような少し長いお休み中に読むのにぴったりな冒険物語です。

 

 今回は旅する場所がちょっとでも伝わるように…

 

f:id:anko_tyk:20230810155239j:image

 地図を書いてみました!(ドーン)

 

 この半島がないじゃないか、とか、この国やたら小さい、だとか細かいところが再現できてなさそうで申し訳ないのですが、おおよその位置関係などを掴むのに参考にしてもらえたらと思います。

 

 物語の始まりの地に選ばれたのはポルトガルです。ポルトガルと言えば、長崎にやってきた南蛮人だと学校で学んだのが懐かしいです(1571年にポルトガル貿易船入港により長崎は開港したようです)。

 

 地図で見ると、ポルトガルから日本は遠い。ポストガルからアフリカ大陸をぐるっと回り、インドやアジアを越え、東の果てと言われる日本まで、そうして新しい土地を発見したときの感動はどれほどのものなのでしょうか。

 

 水平線が続く海へと船をくり出すイメージがあるポルトガルは、15世紀にはじまる大航海時代の幕明けの火ぶたを切ったといえます。ポルトガルの航海王子エンリケによって始まった大航海時代。そうして新大陸の発見はもちろん、アフリカの一部の国やブラジルには、母語としてポルトガル語がその足跡を残しています。ポストガルは、今回の物語の始まりにぴったりな場所ですね。

 

 主人公のハリネズミ・チコはポルトガルのナザレに妹のチカと共に暮らしていました。暮らしていた場所しか知らなかったチコですが、ある事件が発生してさらわれた友人のウサギを助けるために、勇気を出して知らない土地へと向かうのでした。

 

 と、まだ触りの話ですが、全5巻の旅を追っていくと、郷土料理、風土、船、偉人(ナポレオン、マルコ・ポーロキャプテン・クック)、生物、植物、地理、建物、歴史、運河、国際情勢などなど、興味をそそるものがたくさんちりばめられています。子どもでも読みやすいように、説明臭くなく、それでも実際にある土地ということで正直に書いている印象を受けました。

 

 私は関心どころの多い本を読むと、次に例えば、地中海の島に関する本だとか海賊の本、ポルトガルの本が読みたい~となり、読書がますます楽しくなります。自分にとって未知のことがたくさん描かれていたので(知らないことが多すぎる)、知識になりそうなことを紙に箇条書きしてまとめようとしたら、1冊でA4の紙が半分以上埋まってしまいました。小学校中学年~向けなので、文字もさほど小さくはないし、さらっと書いているのに、情報量が多い。関心が外に広がっていく小学生にほんとうにピッタリな読書ではないかと思っています。

 

 また、これまで紹介した本たちと違って、今回は長編ということもあり、旅の途中で出会うキャラクターたちが見た目も性格もそれぞれ際立っています。絵も親しみの沸くユニークなタッチで、作品をより明るくしています。見開きカラーや白黒の挿絵がいくつか差し込まれているのも嬉しいです。キャラクターも味がありますし、風景異国の空気を感じることができます。

 

 本の見返しには、手書きの地図と、巻ごとにそれまでの足取りが分かる様にマークが書き込まれているので、冒険している気分が出てくるのと同時に、地図を見るのが楽しくなってきます。私の書いた地図は足跡はマークしていないので、どんな場所を通っていくのか、本のタイトルと照らし合わせて想像してみたら面白いと思います。

 

 そういえば実家のトイレには世界地図が貼られていましたが、関心を持つきっかけが特にないまま、ただの紙に印刷された地図といった具合で、心躍ることなく名前を漠然と追うだけになっていましたが、こういった本を読んでいたら地図の見方が変わっていただろうなと思います。

 

 好奇心が外に爆発しそうな大人と子どもに、ポルトガルから始まる冒険の旅を通して、世界の広さを楽しく感じてみてほしいです。

 

 ではでは、8月の本の紹介はあと2冊となります。月末にもなると秋の気配はやってくるのでしょうか(紹介的には夏でいてほしいです~笑)。また次回もどうぞよろしくお願いします!

 

---

 

おでん文庫のリアル本棚については下記よりご確認いただけます。

【おでん文庫】7・8月のテーマ ”ここにある海" - おでん文庫の本棚

 

おでん文庫の活動を応援していただけたら嬉しいです!

↓↓↓

にほんブログ村 本ブログ 絵本・児童書へ