おでん文庫の本棚

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アロイス・カリジェの絵本③ 冬に繰り返し読みたい絵本

こんにちは!12月がもう残り半分を過ぎている中、私と言えば、歯医者通いが終わりません…。

寝ている間にどうやら歯ぎしりをしているらしく、大事な歯がすり減っているようです。

昨年のおおみそかは、ハイチュウを噛んでかぶせ物がとれたので、今年の年末も何か起きやしないか、ドキドキしてきました。

 

さてさて、本日紹介するのは、前回に続いて、ゼリーナ・ヘンツ(文)とアロイス・カリジェ(絵)のお2人の絵本第3弾、そしてウルスリとフルリーナの最後の物語

『大雪(DER GROSSE SCHNEE)』

です。

 

舞台は大雪の降る季節、2人が住んでいるアルプスの小さい村で催される子どものそりの大会が、物語の発端となります。

参加する子どもたちは、手持ちのそりに色を塗ったり、飾り付けたりと、各々自分たちだけの特別なそりを作り上げていきます。

その大会にウルスリとフルリーナは一緒に参加することに。

もちろんウルスリは、第1弾の物語となったお祭りのときのように、ご褒美を目指してはりきります。

そうして気持ちが盛り上がってしまい、雪がこんこんと降り積もる中、妹のフルリーナにおつかいを頼むのですが…。

 

と、物語が動き出してゆくのが、大まかなあらすじとなります。

人によっては、この絵本を実際に目の前にすると、表紙の雪が降る中にいるきょうだいの絵と、背表紙に書かれているあらすじを読んで、なんとなく物語の内容を結末まで想像出来るような気もします。

 

ちなみに、人が本を選ぶときに決め手となる要素を見つけるために、気にする点はどこにあるでしょうか。

自分は初めての小説に出会うとき、背表紙のあらすじは大概にして目を通しており、そこで内容が気になるかどうか考えます。

小説では、例えば、"○○たちの交錯する人間関係”と書かれていても、そこに何が起こるのか読んでみないと分からず、そのためにさらに興味を掻き立てられるところがあります。

 

それに対して、絵本も同じように、どういった内容か気になってあらすじを読んだとき、例えば、王子様とお姫様が出てくるなら、ハッピーもしくはバッドエンドのどちらかであろうと、どこかで読んだことのある話と照らし合わせて検討をつけてしまう場合があるような気がします。

そういう、あらすじで判断しようとする考えが自分にあると気付いたとき、はたしてこの紹介している絵本は偶然出会ったときに手に取るだろうか、と考えました。

自分は、カリジェの絵にひかれて手に取った中の一冊だったので、あらすじ関係なく読んだので、これはラッキーなことだったのかもしれません。

絵本に関しては、あらすじで分かった気になってしまうと、本当に良い絵本との出会いを失う可能性があるということが、考えるほどにそう思われてくるのです。

 

紹介している絵本を何度か読み返している中で気付いたのが、自分が本を読むときの目のつけどころが、物語の起承転結に重点を置き過ぎているのではないかということ。

主要な部分を追うことで見えていなかった、例えば下記のようなこと。

 

・子どもが大人の手を借りることをしない

・家のことを当たり前に手伝う、役割を守る

・子どもたちだけで解決する

・約束を守る

 

私の目線なので、読む人によって捉え方は違うと思うのですが、そういった様々なことが物語の中から読み取れてきました。

この読み取った部分を、仕事で使うパワポの資料で例えると、重要箇所は理解してもらいたいので目立つ赤字にするとしたら、黒字はまあ補足程度、口で説明するならそこまで詳しく書かなくても良いか(個人の偏見があります、すみません)としたときの、黒字に当たるのではと考えました。

自分が資料を作る側になると、黒字も一生懸命ですが、聞く側になると、つい、おろそかにしがちという恐ろしい事実が見えてくるのですが、ゼリーナ・ヘンツの物語は細部に行き届いた、主題だけで読むのは勿体ないほどの魅力が詰まっています。

 

上記で書き上げた点は、この本が教育的であることを示しているのではなく、それだけ丁寧に登場人物たちを取り巻く暮らしが作り上げられていて、物語の中でキャラクターがしっかりと息づいているということです。

 

ゼリーナ・ヘンツとアロイス・カリジェの絵本を通して、じっと見つめて、何度も繰り返して読む中で、発見があるのが絵本の良さであることに気付きました。

ゼリーナ・ヘンツは、言葉の中に、おしつけがましさやお説教臭さが無く、一見、さらっと読み終えてしまいそうなくらい、上手に、言葉の奥の部分を描いています。

 

ちょうど今回紹介している絵本は、冬が舞台になります。

今の季節にぴったりな絵本を、家でおこもり中に繰り返し読んで味わう時間は、きっと読んだ人だけの発見がある、楽しい時間になると思います。

前に紹介した本と合わせて、『ウルスリのすず』⇒『フルリーナと山の鳥』⇒『大雪』の順番で読むのがお薦めです。

 

次回は、アロイス・カリジェをいったん離れて、寒さが本番になってきたので、冬か雪にちなんだ本を紹介しようと思っています。

寒くなってきたので、みなさん風邪にはお気をつけてあたたかくお過ごしください!

次回もどうぞよろしくお願いします。