おでん文庫の本棚

大人もこどももみんなで味わう児童文学をご紹介

考えるよりも先にくるもの

 こんにちは!昨日久しぶりにハンバーグを作ったのですが、生地がゆるくなってしまい、4つの楕円形をまとめてひとつのフライパンで焼いていたのが、ゆるゆると変形し、四葉のクローバーのような形になりました。見栄えは悪しですが、幸せの形なら良しとしました。こじつけです。

 

 さてさて、本日紹介するのはこちらの本です。

 

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 『北国からの手紙―キタキツネが教えてくれたこと』

 井上 浩輝 著

 

 おでん文庫の本棚で、今回のテーマ”自然科学ことはじめ”になぞらえて特にお勧めしたいのが、写真家の井上 浩輝さん、大竹 英洋さんです。

 

 写真は今や、撮ることも、見ることも、携帯やSNSの普及によって身近なものとなりました。そんな昨今、個人が写真を撮る機会というのは一日、一週間、一か月でどのくらいあるものでしょうか。

 

 私は写真を撮るというと、記録として活用することが多いように思います。読んだ本の気になったページをメモとして(あまり人に言える話ではないですね…)、はたまた蝶や鳥なども道端で見かけると後で調べるために写真を撮っています。しかし後者は、カメラの用意が間に合わなかったり、ファインダーに収まらなかったりと手ごわく、失敗に終わることが当たり前です…。そういえば先日、本棚を借りている南と華堂さんの最寄り駅である南平駅で、出口の階段を降りたところにつばめの巣を発見しました。鳥の鳴き声がとても近くに聞こえたので、おや、と見上げた先につばめの巣と、巣にふっくりと収まるつばめの姿がありました。これがカメラを構えようとモタモタしている間に巣はもぬけの殻となっていました。5月頭のことなので、今ならまだ出会えるチャンスがあるかもしれません。

 

 そのような具合で、写真を見せるものとして撮ることが少なく、どちらかというと写真は見る側で、Web上や雑誌・本などを介して、それこそ写真を見ない日は無いといってよさそうです。記録だったり、何かを伝えようとしたり、表現を追求したりと、目的も千差万別ではないかと思います。それでは、日々目に触れている写真の中でも、どんなものに、視線がちょっとでも留まるでしょうか。

 

 例えば、『紅の豚』を見たときには、飛行機雲の写真にいつもより目が向きました。5月は、東京タワーとこいのぼりの写真を見ると、今年もこの季節が来たなと思いました。これが、この東京タワーとこいのぼりの組み合わせが恒例であることを知らなかったり、『紅の豚』を見たことが無ければ、写真を見たときに思うことは、また違ったものになったと思います。ただ、自分の体験や経験と結びつくような被写体をとらえた写真と出会ったその瞬間は、少しばかり印象が心に落ちて残ります。

 

 これとは逆に、まったく気にも留めていないのに、写真によって気持ちが引っ張られるということも然り。”飯テロ”と呼ばれる美味しそうな食事の写真を見ると、よほどの満腹状態でもなければ、空きっ腹がウズウズし始めます。何の気もないところに突然、心が引き寄せられる写真が現れると、自分との関連がどうとかかんとかなんて前置きなど頭からすっぽんと飛んでいき、ただただ目の前の写真に見とれている時間が流れます。

 

 おそらくこれは、写真に限らず当てはまることだと思います。本屋さんでなんともなしに手に取ってみた本の冒頭数行を読んでその中身を読みたくなったりと(その後、これはなんだと作者の名前や表紙のデザインやなんやをドキドキしながら確認するような)、目に飛び込んだものが、思考する時間を超えてギュンと迫ってくるような、言葉の無い瞬間に出会うことがあります。こうした出会いで、知った写真家のひとりが今回紹介する本の著者である、井上 浩輝さんです。

 

 百聞は一見に如かずと言いますが、公式のHPのリンクを貼るので一度ご覧いただけたら嬉しいです。

hirokiinoue.com

 

 本は読んでいく行程の中に思考や感情が動きまわり、そのものに何か感想を抱くにはいくらか時間を要するところを、写真は目の前にした瞬間に心が動く機会がひとつあるので、本のように説明に言葉を割くよりも、まずは、見てほしいなと思ってしまいます。

 

 この瞬間というのは、雑貨屋さんで棚に並んだ作品たちを眺めているときに、ひとめでビビッとくる作品と出会うときとも似ていますね。今回の記事で、あんまり本のことを書いてしまうと、なんだか写真との出会いの喜びを半減させてしまうような気がするので、本については次回の記事に続こうと思います。

 

 それでは次回もどうぞよろしくお願いします。

 

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