おでん文庫の本棚

大人もこどももみんなで味わう児童文学をご紹介

今、大人が絵本を読む

  

 こんにちは!今朝は児童書『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』が天海 祐希さんが主演で実写映画化するニュースがありましたね。天海 祐希さんの凛とした佇まいが銭天堂の店主・紅子にぴったりだと思いました。

 

 近所の本屋さんでは、学校の七不思議やおばけの本があるコーナーで子どもが本を眺めているのをよく見かけるので、そうした背筋がゾクゾクする物語は今も昔も怖いもの見たさで人気なのでしょうか。自分の子ども時代と現代の子どもたちの変わりなさに、なんだか懐かしい思い出が重なり、当時に流行ったトイレの花子さんの本を探そうとしたら、やたらめったら実写の怖い画像ばかり出てきたので懐かしい気持ちは早々に散ってうやむやになりました。いやはや、銭天堂はビジュアルでそうしたショックが少なくて心臓にやさしいですね。

 

 それにしても、心臓がどきどきと打つ体験というのは体に悪い、この体に悪いというフレーズを昔どこかで聞いたような気がするのですが(そしてなぜかおじさんが言っているイメージ)、何か悪いことが起こるのではと予感する胸騒ぎや、テストの合否や手術の結果を待っている場面など、この先がどうなるのか分からない状況から未来を想像したとき、心臓がどきどきしていませんか。期待と不安がない混ぜになり、感情や思考が揺れに揺れ、落ち着かないとき。こんなどきどきは早く収まってほしいと願うはず。(明るい未来に期待しすぎてどきどきしているなら、違う意味で、ちょっと落ち着けと周りに言われる場合もあるかも?)

 

 しかし、このどきどきは、毎日食べているお菓子を今日から急にすっぱり止めるのが難しいのと同じく、いざその場でどきどきを止めると決め込んだところで、そうですかと止まらないのが身体の働きです。想像も身体の働きと似ていて、自分の意思ではどうにも出来ずに、思考や感情と仲良くつるんで、走り出したら止まらない15のバイクの夜さながらの疾走を続けてしまいます。

 

 走ってからじゃもう止められないのなら、想像の源泉はどこからやってくるのかと突き詰めようと考えたとき、以前もお話した飯テロ写真を見たときに意図せずして気持ちがそちらへ向かうように、本を読んだとき、テレビを見たとき、人と話しているとき、風景を見たとき、SNSを見たとき、さまざまな自分の外側との接触の中で生まれてくるのかなと思います。自分の外側にある情報に触れたとき、頭の回路がパソコンの立ち上げのごとく、ウィーンと動き始めます。そう考えると、想像、もしくは考えごとは思っている以上に頭の中で絶え間なく動き続けているようです。それでは、どきどきする機会も多く巡ってくるというものです。

 

 とはいえ、なかなか落ち着く暇もないですよね。自分は本を読み終えたときに、しっとりとその読後感にひたる、無の時間が訪れるのが好きなのですが、その数分後にご飯を作る準備をしなきゃと現実に引き戻されたとたんに、まずは、野菜を切って、お湯を沸かして…と次から次へと考えごとが頭の中を駆け巡ります。

 

 そうして日々さまざまな情報に触れて、どきどきしたり考えごとをしたりする時間が、知らず知らずに積もり積もって、感情や思考が大波小波で揺らぎ落ち着く暇がない、その上、その不確かな状況はなんとかしたいと葛藤する思考が続いていく、そんな頭が重くなりそうな状態が常態化してしまっている(ようなことが10代20代で多かったのを思い出してきました…)。

 

 ここでやっと絵本の話です。絵本で描かれていることを考えたときに、昔の絵本は、登場人物が一皮むけたような体験を通過するのが印象に残っているのに対して、新刊の絵本には、自分を構成している大事な部分を描いている、もしくは、今のままの自分を受け入れる内容など、外の情報との接触から何かが起こる、というよりも肯定的に自分の一本の道を進み遂げたり、作者が見ている視野をより感じる印象があります。

 

 ゆっくりと、足を踏み外さないようしっかりと地面を踏みしめているような、北風が吹く向かい風に向かっていく作者が思い浮かびます。展開も、情報量が詰め込まれているのではなく、静かな短い言葉がゆったりと続き、情報化社会で疲れた頭にやさしく染み入るのではないかと思います。

 

 それが今の新刊絵本の要素全てではもちろんないと思いますが、今の時代だからこそ生まれる絵本には、今の時代を生きる人だからこそ分かり合えるものになっているのだろうと、考えました。

 

 また、絵本が子どもだけでなく、大人の読みものとして広まっているのも、新刊絵本を読むと理由が分かるように思います。

 

 というのを、棚を借りている南と華堂(なんとかどう)の店主さんが企画する、大人が絵本読んでもらう会や新刊絵本を紹介してもらう中で、そうした考えがどんどん膨らんでいきました。店主さんが大人のための絵本のようで、と話していたのは、実際そう言って絵本を知ってもらう方がぴったりなのかもしれないなんて思いましたポソリ。

 

 自分の棚では古い本の紹介が多いので、今の風を感じたい方はぜひ南と華堂さんで、店主さんに新刊のおすすめを伺ってみてください。山のようにご紹介いただけますよ!ではでは、次回もどうぞよろしくお願いします。

 

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