おでん文庫の本棚

大人もこどももみんなで味わう児童文学をご紹介

美味しいパンが今日も誰かを幸せに

 こんにちは!今日は冷たい風が吹いて急に涼しくなり、気温が20度以下かと感じる勢いでしたが、最高気温が25度くらいありました。それくらい夏の気温が強烈だったということですね。ひとまずは夏を乗り越えたことを喜んで、それから秋に浸っていきたいです。

 

 今回紹介するのは、10月の本棚テーマの決め手となった本です。

 

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 『つるばら村のパン屋さん』

 茂市 久美子 作 中村 悦子 絵

 

 この表紙がすごく好きです。ウサギたちが覗き込んでいる窓の内側には、焼き立てのパンの香りが広がっているのだろうかと想像をしただけで、なんだか幸せな気持ちに包まれます。

 

 この幸せな食欲を我慢しなくてもいいんだよと、自分に許しを与えられる季節が今まさにやってきている秋ではないでしょうか。実りの秋という言葉もある通り、栗、柿、さつまいもと、調理をして美味しくいただく食べものたちが思い浮かばれます。夏の暑さで落ち込み気味な食欲が元気を取り戻すタイミングに、自然からの美味しいおくりものが嬉しい。

 

 こうした実りある植物たちは、遥かな昔からを空を目指して芽を伸ばし、葉や花をつけて実や種を付けて、種は地面に落ちてまた芽を出し…というサイクルを繰り返しています。その途中の実を付けた段階に、目を付けたのが人間です。植物の栄養を受け取り、身体はしゃきんと起き上がり、活動する元気が湧いてきます。

 

 小学生の家庭科の授業で栄養について学んだとき、体系的に食事の大切さ知識を身に付けて、食事は身体に必要なものという考え方を得たのですが、例えば睡眠と同じく食べ物は必要不可欠なわけで、睡眠は生理現象で当たり前に毎日寝る、それと同様に食べ物も必要だから食べる、という風にそれが当たり前になってくると、必要不可欠なものに対してそれ以上でも以下でもないと思ってしまうときがあります。

 

 朝、仕事に行かなければいけないのに寝坊をしてしまって、朝ご飯を食べる時間がなく家を出てしまったとき。栄養をウィダーinゼリーで補給することがあるのですが、これは身体の元気を維持するのに必要だからすること。食べものから栄養を取らなくちゃいけない、自分のために。

 

 そうした自分を中心とした考え方が自分の中にあり、10月の本棚のテーマ名を最初は「収穫」を軸に考えていたのですが、これが自分が得ることを中心にものを見ていたのが今になると伺い知れます。

 

 本棚のテーマ名が決めきれずに頭の中でぐるぐる悩んで不毛な時間を過ごしていたときに、手に取ったのが今回紹介する『つるばら村のパン屋さん』でした。

 

 「収穫」というテーマで本を探していたので、この本は何かを収穫するでもないし、趣が違うのだけど、好きな本なんだよな…なんてゴチながら本の内容を見返してみたのでした。

 

 この物語は、パン屋さんのくるみさんが、動物たちからパンを作ることをお願いされて、時にはまたとない材料を使ったパンを作ったり、はたまたごちそうされたりと、動物たちと不思議な交流が繰り広げられ、くるみさんはその出会いから新しいパンのアイデアが思い浮かべ、新たなパンを作り出していきます。

 

 この物語を久しぶりに読んで気が付いたのは、くるみさんは動物たちから貰ったものを、自身の手を通して、別の新たな誰かへ届けているということです。

 

 最初の方の話に戻りますが、ウィダーinゼリーを食べて栄養を取るのは身体が活用するのに、自分にとって必要だから摂取していることは確かです。それと同時に、動く身体で仕事をして、それが自分本位なものだけでなくて、ちょっとでも外側の誰かのために、社会のために、世の中のために、そういう考え方をしたら、なんだか自分の中に一度入ったものが、どこかの誰かにお返ししているように思えてきました。

 

 お返し、ということは、自分が受けたったのは貰いもの、つまりは自分の外側からの”おくりもの”を受け取ったということになるのではないでしょうか。

 

 嬉しいことがあったらその嬉しさを誰かにお裾分け、という立派な心掛けに怖気づいたり、自分に余裕があってこそ誰かを助けられる、は正しいと自分優先に考えることがありますが、そもそも今こうして生きていることは、外側からのおくりものがあったからこそだと思うと、自分てほんとに度量がちっちゃくて自分本位だなと切なくなりました。

 

 誰かのためにやっているのだ、とやっていることが実際は自分への見返りを求めていることに気が付いたりね…。本に登場するくるみさんは、そうした押し付けはなく自然と、周りの人に幸せをお裾分けしているところも今回の読書で気が付くに至りました。

 

 この自然に、というのがどうしたら出来るのか、自分中心な考えを今回を機にちょっとでもお返しの気持ちを外に出せたら変われるのかなってまた悩むわけですが…。自分が目を向けているもの以上に、受け取っているものが外側にたくさんあるんだなってことに気が付けた今回。この本の紹介がみなさんへの”おくりもの”になるといいな(なんて口に出したらそれはもう押し付けじゃないか)。

 

 ではでは!次回もどうぞよろしくお願いします。

 

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【おでん文庫】10月のテーマ ”おくりもの" - おでん文庫の本棚

 

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