こんにちは!今日はおいしいお米を食べてしみじみしていました。人の顔が見えるお米は初めてで、ありがたみを感じながらいただきました。この気持ちを忘れないようにしよう…。
さてさて、本日は海底の神秘にせまる本です。
『海底二万海里』
ジュール・ベルヌ 作 清水 正和 訳 アルフォンス・ド・ヌヴィル 画
夏にこそ、と紹介するのがこの一冊。海、そして冒険はワクワクしますね。先日読み終えた『ニワトリ号一番のり』の熱がまだ燻っており、それもあってこのブログを書いている机の上には『セイル・ホー! -若き日の帆船生活-』という本も待機しています。「セイル・ホー!」という掛け声は、船の見張りの船員が上げる言葉で、なんだと思いますか。海の上に他船が見えたときに叫ぶのだそうですよ。これで今日言うのが2回目ですが、ワクワクしますね。表紙の絵を見て児童書と思い込み図書館で借りてきたのを早速開くと、文章が大人向けと変わらない様相で、大人向けかと思ったら後ろに「全国学校図書館協議会 選定図書」とありやはり、子ども向けでありました。面白いなあ。
こう、お気に入りの本と出会うと没頭していると言えるかもしれず、そんなときはちみつみたいにトロトロとしたもので甘い気分に浸るような、動というよりも静で、ただただ時間の許す限りそのまま机に伏せて目をつむってじ~んと感じていたくなります。では今度は動的に、外側へとその没頭したものを表そうとすると、これって熱狂というのでしょうか。
今、世界中で盛り上がっていると思われるのがパリオリンピックですが、こんな風に人々の関心・注目の的となることというのは、それこそ世界規模のイベントであったり、人類初への挑戦(オリンピックも新記録を目指すところが同じといえるかもしれません)が思い浮かびます。
人類がまだ月に降り立っておらず、宇宙を目指していた頃、世界が宇宙への憧れで高まっていたことや、エベレストという世界一高い山の登頂を目指してこれまた世界中が競っててっぺんを目指し、その熱狂が山登りたちを大いに刺激していたことなどから、未踏・未知の世界に向かって挑戦する者がいて、そしてその挑戦を見守る者がいる構図が浮かんできます。
この前人未踏といわれるものへの熱狂、というのを、実際に体験していた人たちを自分は目の当たりにして話を聞いたかどうかはあまり記憶にないのですが、現在おでん文庫の棚に置いている『宇宙授業』の著者である中川 人司さんは、宇宙を目指そうとする人類の熱狂の渦中で、火の玉のように熱くなった人のひとりで、そうして人生に影響を受ける程の熱を帯びていくのですが、この未知のものへの熱量というのが、自分の感じているものと違っていて、なんだか憧れてしまうのです。
自分が子どもの頃には、ポルノグラフィティの「アポロ」が歌うように、もう人類は月に到達しており、日本人宇宙飛行士が宇宙へ行き、エベレストは人が登れない山ではなかったし(しかし当時は関心がなかった…)、海には終わりがあって端は崖になっている、なんてこともなく、世界地図で世界を見渡すことも島の名前をひとつひとつ知るこことが出来る、月の石は画像で見たことがある、そんな状態でした。人類が新たな挑戦をしている、という熱狂を目の当たりにしそびれて、そういうものたちを、ふーん、へえといった温度感でつい聞いてしまうのです。自分の知らない世界への期待と想像をする、そうした高まりが起こるほどに外へ好奇心が働いていたかというと、個人的な小規模のできごとであればあったかもしれませんが、それでも好奇心の範囲が歩ける範囲くらいの規模感に収まっていました。そんなだから、前人未踏に対するその当時の人々の熱狂ってどんなもの、そちらに興味がひかれることがありました。そうした興奮を知らなかったから、知りたかった。はたから見ると、だいぶ冷めていた子だったと思います。
『海底二万海里』の本が出版されたのは1872年と、今から100年以上も昔になります。伊能 忠敬が日本を測量して、地図としてかたちになったのが1821年だそうなので、やっと日本のかたちがみえてきた、そんな時代を少し過ぎたころに、神秘の海底への冒険の物語が現れたらどうでしょうか。世界のまだ未開とされてるものへの好奇心、さすがにこの時代に自分が生きていたら冷めていないで興奮してほしい…。
今はインターネットや仮想空間など、バーチャルなかたちのないものに新しい可能性が生まれ始めていますが、ゼロからイチを生み出すことと、今ある世界の未知に迫ることとは、同じ線路の上で話すことではないような気がします。と思うことのひとつに、熱狂に巻き込まれている人の数の違いや、大人から子どもまで対象が広いこと、明確な一番を世界で競争したことなど、規模が大きかった。どんどん個人の趣味・趣向が細かく分かれている今は、大きな熱狂の渦ってどんな場合にあるのだろうと考えてしまいます。
自分は、想像するしかない。この本がどうして100年以上を経て今も読まれているのか。著者が海や海洋生物、潜水艦の仕組みについて勉強をして、まるで実際に目の当たりにしたかのような細かい描写によって、そこで描かれる海底の神秘の世界に多くの人が魅了され、現在まで読み継がれてきたのかな、なんて思うと、この昔の人の熱狂が忘れ去られてほしくないし、現代を生きる自分も、あてもなにもないけれど、負けていられません。
ということで、ではでは次回もどうぞよろしくお願いします。
---
おでん文庫の活動を応援していただけたら嬉しいです!
↓↓↓