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ジュール・ベルヌの描写に痺れている話

 こんにちは!読書の秋、みなさんは楽しんでいますか。今年の夏も酷暑だったので、やっと腰を落ち着けて本を読める季節がやってきました。

 

 私がここ最近読んでいる本といえば、マーク・トウェインハックルベリー・フィンの冒険からのミシシッピ川宮沢賢治からの仏教・化学の関連本で、読んでいて、それはそれで楽しいけれど、読みたい本を読むというよりかは調べものをするための読書が続いています。そう、最後に物語を読んだのはいつのことでしょうか…。

 

 そういえば、年初に掲げていた目標があります。世界で100年以上に渡り読み継がれている物語が完訳された福音館古典童話シリーズを読むと決めていたのです。これまでにシリーズ本43冊のうち28冊まで読むことができましたが、それでも今年も残すところ2か月半にも関わらず、まだ半分近く未読の本があります。その焦りから、少しでも読み進めようと思い、福音館古典童話シリーズのジュール・ベルヌ神秘の島(上)』を読み始めました。

 

 ジュール・ベルヌは創作することにおいて衝撃を受けた作家のひとりです。現在これほど物語の周辺情報を調べるようになったのもジュール・ベルヌの創作作法にあります。

 

 ジュール・ベルヌの作品を初めて読んだのは福音館古典童話シリーズの海底二万海里した。私が読みやすいと感じる本の傾向が若草物語『ハイジ』といった日常を描いた物語であることから、『海底二万海里』という未知の海底世界に没入できるのか、実は読む前に多少なり怖気づき、なかなか本を開けずにいました。それでも読むに至ったのは、児童文学を勉強するからには…というやる気だっと思います。752ページもあるので、読む前に気合を入れていたことはうっすらと覚えています。

 

↓『海底二万海里

https://www.fukuinkan.co.jp/book?id=221

↓『神秘の島(上)』

https://www.fukuinkan.co.jp/book?id=370

 

 しかし実際に物語を読んでみると、読む前の心配はどこへやらで、没頭して読みました。お休みの日をまるまる読書に費やしてもその日中に読み切れず、寝る時間も後ろ倒ししながら、数日掛けて読み終えました。

 

 物語は、主人公が運悪く、どこの国にも組織にも属していない(輪郭がはっきりしない存在ほど恐ろしいですよね)潜水艦に閉じ込められ、そこで過ごした月日の記録が描かれています。この高性能な潜水艦は、主人公をまだ人類が見たことのない海底世界へと誘います。そして、物語が進んでいきクライマックスで艦長から明かされる潜水艦に乗っている理由、そして目的についてを知ったとき、私は複雑な気持ちになりました。最初は何を考えているのかも分からず恐怖だった艦長から人間としての輪郭が見えてきたことで、考えさせられます。

 

 物語を読み進めていくうちに自然と海底世界と艦長の魅力に引っ張られていたわけですが、それに加えて強大にこの本の底知れなさを感じたのが、骨太な描写力による現実感にあります。

 

 この本が出版されたのが1872年で、今のように情報が簡単に調べられる時代ではもちろん無く、それでいて『海底二万海里』では、水深、海流、海底の地表、潜水艦の構造などさまざなま情報がしっかりと書き込まれていることに驚きます(知識が無くても面白く読みました)。

 

 訳者のあとがきで、ジュール・ベルヌは物語を書くために、周辺情報を調べて物語に落とし込んでいたと知り、そのことに結構衝撃を受け、自分の考えの甘さに鞭が打たれました。現実感があってこそ、想像の世界に自らが入り込んでいけるのだと、そう受け止めました。

 

 それまでは、想像の世界を描くために必要なのは、幼稚な発言ですが非現実な世界観だと思ってました。もっと言うと、動物が突然言葉を話し出すありえない世界を疑いもなく受け入れている自分がいて、それは想像の世界は作者によって作られた世界だという目で見るのが当たり前になっていたために、作者の想像力を感じ取ることができていませんでした。

 

 アニメ版の感想で恐れ入りますが、魔女の宅急便で猫のジジが当たり前に人間と言葉を交わていたのに、物語の途中から話せなくなってしまうのが、ずっと不思議でした。あとになって知った情報によると、このとき変化があったのはジジの方ではなくて、キキの内面の変化が影響しているとあり、驚いたんですよね。猫が話せないのは現実世界では当たり前の話ですが、想像の世界は作者がそういうものだと決めたら、そういうものだ、で捉えていました。

 

 ですが、私が考えいた以上に、物語の舞台設定、法則、因果関係など、いかに現実の中に不自然なく組み込めるかということが大事だと気づかされました。その方が絶対に、物語に読者が入り込み、熱中するはずです。ジュール・ベルヌの作品に没頭したことで、現実世界に則って描いた想像の世界の魅力を実感したのです。

 

 そして、読書は『海底二万海里』から『神秘の島(上)』へと移ります。当時は、マイルの表記でさえ、具体的に書かれていても頭に入ってこなかったのですが、『神秘の島(上)』は、調べながら読み進めようかと考えています。どんな読書体験になるのか楽しみです。

 

 物語の冒頭で気球が登場するのですが、早速描写が細やかで、風の速さに対して、一時間でどの位進み、どの位下降するのか、と具体的に描かれていてもう尋常じゃないです。これでまだ、ほんの冒頭なんですよ。こちらも読み終えたときに感想を書けたらいいなと思います。

 

 ではでは、次回もどうぞよろしくお願いします。

 

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