こんにちは!もう2週間前になるのですが、年末年始は神社やお寺へ参拝をしていました。
建造物の木のぬくもり、池や木々の穏やかさが、日頃仕事をして暮らしている風景を一時でもさっぱりと忘れさせ、元気をもらいました。
場所との相性やご縁を感じる瞬間がある…そういった風景を、ずっと追いかけて観察しているのが、14ひきのシリーズの作者、いわむら かずおさんです。
14ひきのシリーズの作品タイトルには【あさごはん、せんたく、こもりうた】と暮らしを連想するものと、【ぴくにっく、おつきみ、もちつき】と季節や自然を連想するものがあることに気が付きます。
しかも、シリーズ全体で朝から夜までの1日、季節はひと巡りをしていることになります。
なかなか、ここまで暮らしに密着をして、何巻にも渡り絵本を出しているのは珍しいのではないかと思います。
作者は、最初に絵本を作ろうと決めてから出版をするまでに8年、構想を練ったとあります。
さらに、シリーズの最初の本は1983年に出版、最後の本は2007年となると、構想から約30年かけてこの作品を作ってきたことになります。
それほどに、作者は自然と暮らしを観察をすることの面白さを感じ、探求心を掻き立てられていたのだと思わされます。
この投稿の最後にリンクを貼っている、参考にさせて頂いたインタビューでは、作者が子ども時代から大人時代を通して、雑木林と大家族に囲まれて過ごしていたことが、後の作品の方向性に大きく関わっていることが分かります。
突然ですが、子どもの頃に過ごしていた風景で、今も思い出すものは何でしょうか。
作者ににとっては子どもの頃、5、6歳の時に戦争がはじまり、家族と離れ離れになって過ごすのですが、戦争が終わった後、家族8人でまた一緒に暮らせることになり、8畳1間の住まいで家族と暮らした日々と、その時近くにあった雑木林で遊んだ日々がずっと心に残っていました。
それから作者は、絵本作家としての道を歩んでいるうちに、子どもの頃に心に残った風景を求めて、家族と共に栃木県・益子に住まいとアトリエを構えます。
そして、作者の心に残った原風景と、益子の雑木林、自身の子どもたちとの暮らしが重なり合い、かたちとなったのが、1983年の夏に出版した「14ひきのひっこし」「14ひきのあさごはん」です。
どちらも、作者の体験を元に描かれています。
自分の経験や見た景色が、そのまま作品に反映されるというのは、本当によく考えたり、みつめたり、じっくりと育てていくことをしないと、今目の前の出来事もすぐに忘れて、風に飛んで行ってしまいます。
作者はその時々の感情や景色をしっかりと掴んで、よくよく見つめています。
だからこそ、ねずみ家族家族団らんの風景や自然は、大人になってから忘れてしまった子ども時代に立ち返らせ、心の奥深くにしまった思い出を引っ張り出してくれることで、心をあたたかくしてくれたり、奮い立たせてくれるところがあります。
また、ねずみのきょうだいは10ぴきと多いにも関わらず、作者は全員を個性的に描こうとする姿勢があります。
そして、長男の1番目のいっくんから、末っ子の10番目のとっくんまで年齢差をつけて描いています。
これは、作者に自分の子どもたちの成長が、いくつのときも、かけがえのない瞬間だと思う気持ちがあったのではないかと思います。
怒ったり、泣いたり、人にやさしくしたり、甘えたり…いろんな表情をみせる子どもたちを見ていた作者だからこそ、10ぴきの年齢差と個性によって、細かくかき分けていたのだとと思います。
作者の、心に残る風景をしかと掴んで、観察をして、じっくりと構想を練って描いた絵本。
大人にとっても、子ども時代を思い出して心に元気を与えてくれる、そんな力があります。
まずは「14ひきのひっこし」「14ひきのあさごはん」、ぜひ手に取ってみてください。
次回は、この絵本シリーズをもう少し掘り下げる予定です。
どうぞよろしくお願いします。
参考:「14ひきのアトリエから」いわむら かずお 著
絵本作家 いわむらかずおさん 絵本作家インタビュー(前編)|mi:te[ミーテ]https://mi-te.kumon.ne.jp/contents/article/12-258/